2年半で死傷者1400人 英国の電動キックボード「事故リポート」から、日本が真剣に学ぶべきこととは【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(13)
- キーワード :
- 電動キックボード, 牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線, パーソナルモビリティ
英国の特徴
英国政府は2020年1月から2022年6月末までの2年半の期間、電動キックボードが関連した死傷事故データをリポートとして公開している(ただし、一部欠損含む速報値であり、完全なデータは2023年9月発刊予定)。リポートの特徴的な事項を読み取ってみた。
気になる電動キックボードが関与する死亡事故は死亡者数が12人であり、うち
・電動キックボードの運転手:11人
・歩行者:ひとり
だった。電動キックボードが関与した死傷者数は
「1437人」
であり、電動キックボードの運転手が1095人と最多だ。死亡以外の重傷者は429人、軽傷者は996人と報告されている。
ただし軽傷者は報告義務がないため、過小の可能性があるとリポートでは指摘しており、実際の事故はもっと多いと考えられる。
軽傷事故の報告件数が過小のため、死傷事故件数に占める重傷化の割合が数字上は非常に高くみえるものの、電動キックボードで転倒や衝突などした場合には、重傷化する確率は高いと考えておいた方がよいだろう。
では、どのような重傷事故が多いのだろうか。警察に報告され「CRASH」というデータベースに登録されている数字だけではあるものの、
・頭部損傷
・意識不明
・頭部外傷
などの重傷事故が79人あり、足や腕、骨盤等の骨折が99人となっている。多くは運転手の転倒により頭部や足、腕などに傷害が生じているようだ。
また、電動キックボードが関与したすべての衝突事故のうち、単独車両衝突事故が1095人であり、対歩行者が243人、対自転車が58人、対自動車が24人となっており、そのうち重傷事故が対歩行者62人、対自転車18人と報告されている。
「歩行者や自転車との重傷事故」
が多いのが特徴であり、自動車と物理的に分離された専用通行帯が英国では整備されていることから、自動車との重傷事故が少ないと考えられる。