高速トラック「80km制限撤廃」という名の暴論 正鵠を射る“本末転倒”の指摘、最重要課題はドライバーの安全確保だ

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このたび、政府がまとめた政策パッケージに、トラックの高速道路の最高速度を時速80kmから引き上げることが盛り込まれた。現場から聞こえる「本末転倒」という声の理由とは。

政策パッケージの中身

高速道路を走る物流トラック(画像:写真AC)
高速道路を走る物流トラック(画像:写真AC)

 2023年6月2日、総理大臣官邸で第2回「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」が開催され、「物流革新に向けた政策パッケージ」がとりまとめられた。

 今回の政策立案の主な背景は、最近ニュースにも頻繁に取り上げられている物流の「2024年問題」だ。2024年問題とは、2024年4月からトラックドライバーに「働き方改革関連法」が適用されることにより、予測されている諸問題のことである。なかでも注目されているのは、法律でトラックドライバーの拘束時間の上限が3516時間から3300時間(6.1%減)へ制限され、時間外労働の上限が年間960時間に制限される点だ。現状と比べて労働時間が短くなり、輸送力の不足が懸念されている(2014年に14%、2030年には34%が不足する推計が政策パッケージ内に記載がある)。

 輸送力不足の結果、物流が滞り、商品の遅配や届かないという事態が発生する可能性がある。このような状況に対応するため、政府は前述の政策パッケージをとりまとめた。

 この政策パッケージでは、現在の大型トラックの最高速度である時速80kmを引き上げるという内容が含まれており、物流業界でさまざまな意見が飛び交っている。そのひとつの意見が、ニュースでも取り上げられた労働組合の発言、

「本末転倒」

である。

 速度規制の時速80kmについては、2003(平成15)年に、いわゆるスピードリミッターの装着が義務付けられ、徹底が図られた経緯がある。当時は、今と比べてコンプライアンス(法令遵守)への理解が低く、制限速度の徹底には、

「納品のリードタイムが延長する」

などの観点から反発の声もあった。

 しかし、義務化後の調査報告により、事故発生件数の減少が確認され、

「安全対策として取り組みは成功した」

と評価された。

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