GM・フォードはなぜ「急速充電」規格を変更するのか? 日本主導の「CHAdeMO」はガラパゴスの可能性も 今後どうなるのか【連載】和田憲一郎のモビリティ千思万考(13)
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NACS規格が「米国標準」になる日

●EVが市場にて成長期に突入しようとしていること
EV/プラグインハイブリッド車(PHEV)の世界における販売台数は、国際エネルギー機関(IEA)の調査によれば、2022年で1000万台、販売比率14%を超えた。2023年は前年同期比35%増の1400万台、販売比率は18%になると予測している。
一般的に新商品の普及に関して活用されるイノベーター理論に照らし合わせると、2023年はアーリーアダプターからアーリーマジョリティーへと突入する段階となる。つまりEV/PHEVが商品として市民権を獲得し、一気に普及モードに突入するクリティカルマスを超えるタイミングであるともいえる。このため、営業、企画部門は変えるのなら今だと判断したのではないだろうか。
一方、テスラにとっては、GMとフォードがテスラのNACS規格を採用することは、
「米国標準規格」
になることを意味し、また、スーパーチャージャー使用料が入ることもテスラにとってはメリットとなる。なお、テスラユーザーの不満が出ないように、さらなるスーパーチャージャーの設置が必要になる。
さらに、テスラは今後CCS陣営と競合する必要はなく、CCS陣営が設置していた充電場所もテスラがNACSに変えて引き継ぐこともあるであろう。米国の補助金は現在CCS規格と規定されているが、これも早晩NACSにも適用されるのではないだろうか。
今回の急変に関して、CCS陣営は
「NACS規格はIEC(国際電気標準会議)に準拠しておらず国際規格ではない」
などとクレームを申し立てているが、もはやGM、フォードは長考の末の決断であり、元に戻らないと思われる。
なお、IECに準拠した急速充電の国際規格は、CHAdeMO規格、中国のGB/T規格、CCS規格(CCS1、CCS2)がある。NACSは米国SAE(Society of Automotive Engineers)が定める規格となっている。