自動車業界で激化する「ITエンジニア争奪戦」 永遠の課題「ソフトウエア標準化」で電子制御ユニット開発を効率化できるか
何が切り札になるのか

各社ともにリスキリング活動を活発に進めているが、時間も費用もかかり、育成できるITエンジニアの数は限られるため、現状、需要に応じきれていない。となると、
「仕事量を減らす」
しかない。IT業務を人工知能(AI)で効率化するのは自然だが、実際の効果はどうなのだろうか。
対話型AI「Chat(チャット)GPT」は
・プログラミングのソースコード生成
・ソースコードの不具合解析(品質向上)
を実用的なレベルで行え、今後の本格的な活用が期待される。
コンピューター支援開発(CAE)など、IT技術を駆使して車両開発全体を簡略化するモデルベース開発(MBD)は、マツダを筆頭にすでに活用され、開発のスピードアップ、品質向上や費用低減など、総合的な開発効率向上の効果が宣伝されているが、実際には
「大きな開発効率の向上が常に実現できる」
レベルには至っていない。逆にそれなりの設備投資が必要なため、全体的には伸び悩んでいる。
ソフトウエアの標準化は「永遠の課題」

そして、ソフトウエアの標準化は“永遠の課題”だ。
・ソフトウエアが完璧で市場不具合がない
・技術の劇的な進化がない
なら標準化は可能だが、実際には
・市場不具合対応でソフトウエアをパッチワーク修正する
・技術には必ずパラダイムチェンジがある
ため、定期的な作り直しが必要で持続的な効果を得にくい。
次のパラダイムチェンジである「統合ECU」の実用化はすでに始まっている。テスラのモデル3などは数個のECUで車両の全てを制御している。
2022年のEV(バッテリー式電気自動車〈BEV〉 + プラグインハイブリッド車)販売台数が世界1位となった比亜迪(BYD)の「e-Platform 3.0」はさらに上を行き、ECU、モーターや電池など、BEVに必要なシステム全てを統合している。
トヨタとゼネラルモーターズはこれに対して、デンソー、ボッシュほか10社と「Autonomous Vehicle Computing Consortium(AVCC、自律走行車コンピューティングコンソーシアム)」を2019年に立ち上げ、標準化によるECU開発の効率化を主導する。