自動車業界で激化する「ITエンジニア争奪戦」 永遠の課題「ソフトウエア標準化」で電子制御ユニット開発を効率化できるか
リスキリングに注力する大手企業
世界的に自動車会社だけではなく、サプライヤー(自動車部品メーカー)もITエンジニアの確保を進めているため、その確保は簡単ではない。
そこで、多くの企業では自社内での配置転換とそれにともなう再教育(リスキリング)に取り組んでいる。
欧州連合は、車のIT化や電動化で失われる多くの職を補完する技術・技能教育の枠組みとして「DRIVES」を2021年から本格稼働させた。DRIVESとは
「The Development and Research on Innovative Vocational Educational Skills project(革新的職業教育スキルの開発・研究プロジェクト)」
の略称で、54か国、2700社が登録している。
ドイツのメガサプライヤー・ボッシュは、リスキリングと能力向上(アップスキリング)に20億ユーロを投資中で、ベンツはドイツ国内だけで社員教育に13億ユーロ(1965億円)を2023年に投資する予定だ。
フォルクスワーゲンは即戦力の中途採用を優先するが、電動化に関連するリスキリングのために「Future e-Mobility Campus(未来eモビリティ・キャンパス)」を立ち上げている。
日本でも、トヨタと日産、デンソーは配置転換とリスキリングを進めている。トヨタは2020年に「ソフトウエアファースト」戦略を掲げ、リスキリングでITエンジニアを育成中だ。
ただ、トヨタのリスキリングは今に始まったわけではない。2009(平成21)年には多くの技能職をコンピューター利用設計システム(CAD)のモデラーにリスキリングしている。また、パソコンで自学自習できる「e-ラーニング」などのアップスキリングの仕組みも整っている。
日産は、2019年に車載ソフトウエア開発に関する社内研修施設「日産ソフトウェアトレーニングセンター」(神奈川県厚木市)を報道公開した。デンソーは、2021年に、ITエンジニアを、質と量の両面で強化する「キャリア転進プログラム」の運用を開始している。