トヨタ「水素ファクトリー」新設は何を意味するのか? 欧中との提携強化で商用車メイン予想、全方位外交の行く先とは
水素ファクトリーの展望と未来戦略
ここで気になるのは、
・現時点で商品化されている「既存FCVの去就」
・既に実戦用レースカーとともに稼働し、市販化に向けて加速している「液体水素内燃機関の取り扱い」
である。
これらは開発体制が既に確立されていることから、現在担当しているそれぞれの組織が今後も継続担当する。
こうしたことからも、水素ファクトリーが担当するのは、あくまで新規事業であるということがわかる。
トヨタの水素ファクトリーは、発足時の配置人員規模としては1350人体制となる。この数字は担当する事業内容の幅広さを考えるとそれほど大きいわけではない。
しかし、今後の市場動向次第では大きく拡大していくことも予想できる。ここにトヨタの未来戦略がある。そんなことを考えさせる新たな組織である。
北米BEV生産とリチウムイオン投資拡充
一方、トヨタのカーボンニュートラル戦略はこれだけではない。
トヨタはこれまでメディアなどでそのBEV戦略の遅れを指摘されることが多かった。しかしここに来て、具体的なビジネス拡充策が次々と発表されている。
そのなかで代表的なものは、北米を基点としたBEV生産の開始である。そして、そこで使用されるリチウムイオン電池生産工場への追加投資だ。
前者については、トヨタの北米基幹生産工場であるケンタッキーファクトリーでの新型BEV生産を2025年から開始するという。この車両は、北米市場で市場競争力が高い3列シートスポーツタイプ多目的車(SUV)となる。これはトヨタとしては北米で生産する最初のBEVだ。
後者については、現在建設中のノースカロライナでのリチウムイオンバッテリーファクトリーに対して、21億ドルの追加投資が決まった。これでこの工場への投資総額は合計59億ドル(約8230億円)となり、稼働開始後の需要拡大次第ではさらなる投資強化も十分に予想できる。