トヨタ「水素ファクトリー」新設は何を意味するのか? 欧中との提携強化で商用車メイン予想、全方位外交の行く先とは

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トヨタは新たな社内カンパニーである「水素ファクトリー」を新設する。そこには拡大するFCV需要への対応。そして内燃機関生き残りのキーとなる技術である水素燃料エンジンへの注力が見て取れる。

カーボンニュートラル戦略への旗印

2022年10月31日撮影、東京都内の自動車ショールームに掲げられたトヨタ自動車のロゴマーク(画像:AFP=時事)
2022年10月31日撮影、東京都内の自動車ショールームに掲げられたトヨタ自動車のロゴマーク(画像:AFP=時事)

 2023年7月1日。トヨタは新たな社内カンパニーである「水素ファクトリー」を新設する。社内カンパニーとは、2016年からトヨタが展開している社内組織体系のこと。社の中枢というべきヘッドクォーターの下、企画開発から商品化までを一元的に行う組織構造に細分化。それによって迅速かつ小回りが利く組織運営を可能とすることが導入の目的だった。

 ここに新たに水素ファクトリーが加わるということは何を意味しているのか。それはまさにトヨタのカーボンニュートラル戦略への

「旗印の明確化」

である。

 水素ファクトリーの役割は、いうまでもなく水素関連商品の開発だ。水素の効率的な

・製造
・貯蔵
・輸送
・供給

体制の確保。そこには拡大する燃料電池車(FCV)需要への対応。そして内燃機関生き残りのキーとなる技術である水素燃料エンジンへの注力が見て取れる。

欧州・中国との提携構築

トヨタの佐藤恒治社長(画像:トヨタ自動車)
トヨタの佐藤恒治社長(画像:トヨタ自動車)

 ここで重点的に注力されるのは、近年になって過激ともいえるカーボンニュートラル政策を次々と決定している欧州と中国への対応にほかならない。

 この両地域ではいずれもバッテリー式電気自動車(BEV)をメインとした電気自動車へのシフトが経済共同体や政府などの公的組織の主導で進められている。ただし、カーボンニュートラルへの道はBEVひとつではない。水素燃料電池や水素燃料内燃機関もまた選択肢のひとつである。

 トヨタは今回水素ファクトリーを通じて、これら欧州と中国というふたつの地域において中長期的な戦略とともに、新たなサプライチェーンも含めた提携関係の構築を目指すという。

 こうした場合、何よりも重要なことは

・資金
・人材
・協力会社

などの集約と効率的な運用にほかならない。まさしくそのための新たな社内カンパニーの創設だったというわけである。

 水素ファクトリーは、これまで商用車を担当していたCV(Commercial Vehicle、商用車)カンパニー内にあった水素関連事業部を独立拡大する形での新設となる。こうした動きから見て、今回明言はされていないものの、取り扱うのは商用車がメインとなることが推測できる。

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