次期戦闘機F-Xの国際共同開発にひそむ「固有リスク」 日本は1兆7000億円負担、予算膨張&開発遅延 過去の二の舞にならないか?

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航空自衛隊の次期戦闘機の共同開発が2022年12月に決定された。現時点ではイギリス、日本、イタリアの三国だが、スウェーデンもなんらかの形で作業に関わる可能性がある。今後の課題は何か。

各国の持つ先進技術の統合

戦闘機の世代推移予測(画像:防衛省)
戦闘機の世代推移予測(画像:防衛省)

 共同開発をスムーズに進めるには、無理や無駄のないよう各国が役割を分担し、そのうえに強力な開発管理体制を構築する必要がある。開発の中心拠点はイギリスに置かれることが決定されているが、

・各国政府と企業の主体性をどこまで認めるか
・問題が生じた場合にどう調整するか

など、これまで経験のない共同事業だけに、マネジメントの課題は多いと思われる。

 参加各国には、それぞれが保有する独自の優れた技術がある。日本では、これまで「将来戦闘機に関する研究開発」として、技術実証機X-2やXF9エンジンの研究試作なども含め、総額で2200億円以上の費用を投じて要素技術を蓄積してきた。次期戦闘機の開発には、それらの技術を最大限活用したいという関係者の思いは強い。

 イギリスのBAEシステムズ社は、F-35戦闘機の共同開発において、各種サブシステムの設計や機体構造の試験や製造などで大きな役割を担った実績があり、UCAV研究機タラニスを試作して飛行試験も実施してきた。イタリアから参加するレオナルド社は、統合センサー・通信システムと機械学習(AI)を連接させた「戦闘航空AI技術」に取り組んでいる。

 これらの技術をうまく統合できれば、各国が期待する「第6世代戦闘機」の構想に近づくことも夢ではなさそうに思えるが、持ち寄っただけで実用戦闘機が実現するものではない。要素技術の取得は、あくまでも開発をスタートさせるための前提であり、実用機の設計に取り込むためには、より進んだ検討や試験を重ねなければならない。

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