CO2削減はここまできた! フランス鉄道2時間半以内の「国内線禁止」、急進的な法案の効果限定的も 今後拡大の可能性はあるのか
フランスで5月23日、高速鉄道で移動できる短距離区間での航空機利用を禁止する法律が施行された。しかし、実際には3路線のみで、影響自体は限定的だという見方が多い。
利用者への影響は限定的

鉄道へ代替可能な航空機を全廃という、なんとも思い切った法案である。しかし、実際には3路線のみで、影響自体は限定的だという見方が多い。
今回廃止となったパリ~リヨンの所要時間と往復運賃を鉄道、飛行機(パリ・シャルルドゴール空港で計算)で比べてみると、
・鉄道利用(フランス国鉄TGV):1時間50分、71ユーロ(1万605円)
・飛行機利用(エールフランス航空):1時間5分、179ユーロ(2万6734円)
となった。
なお、ともに往路は早朝、復路は夜の同じ時間帯の便を比較対象とした。時間帯や時期によって運賃は変動するが、おおむね鉄道が6割ほど手ごろな価格となっている。
所要時間は飛行機が1時間ほど少ないが、空港から市内への移動や、チェックイン、保安検査場の通過などを考えると、飛行機での移動は出発時刻に加えて1時間弱は長くかかる。
こう考えると、鉄道で2時間半の路線と航空機での飛行時間1時間は、所要合計時間で考えるとそこまでの大きな差異はない。むしろ、費用の面でも時間の面でも、短距離間の移動は鉄道利用が便利なことが多い。
今回のオルリー空港発着の廃止路線は、代替手段も多い。バスや鉄道は航空機よりも低コストで利用可能であり、航空機での移動を好む場合はシャルルドゴール空港からの選択肢も残されている。利用者にとっては、路線廃止の影響は限定的だろう。
一方、航空会社は短距離路線での収益が見込めなくなるぶん、
「運賃の上昇」
といったしわ寄せが及ぶ可能性もある。また、ライバルである飛行機便が減ったことで、鉄道会社やバス会社による
・運賃のつり上げ
・サービスの質の低下
など、適切な競争がなくなる恐れもある。