テスラはなぜ「右ハンドル車」を生産終了するのか? 一見マイナス施策に見えるも、背後にちらつく販売戦略の根本転換
テスラ躍進の背景
テスラはその初期においてはブランドイメージを確立すること重視していた。ゆえに豪華なフラッグシップ的セダンであるモデルSと、同じく大柄なスポーツタイプ多目的車(SUV)であるモデルXをリリースしていた。
しかし市場が拡大するにつれて、新たなユーザーはよりリーズナブルな価格で購入しやすいモデルを要求することとなる。そこで投入されたのがコンパクトサイズのモデル3とモデルYだった。
テスラが世界的にその販売台数を大幅に拡大する原動力となったのは、まさにこの2モデルであることに異論を挟む余地はない。
そして、ここのところ一部で目撃情報などもささやかれている次期モデルは、いずれもモデル3とモデルYの延長線上にあるコンパクトサイズである。
もちろんモデル3とモデルYについては、右ハンドルモデルの生産を中止するなどといった決定は一切なされていない。
中古モデルS・モデルXの価値どうなる
ここまでの状況でわかること。それはテスラ自身が既にフラッグシップ的モデルの生産自体を
「終了する準備」
に入っているのではないかということだ。
そもそもモデルSは既に生産開始から10年以上。モデルXも2年後には10年を迎える。生産終了まで至らなくとも、大幅縮小もまたやむなしと判断するには妥当な年月である。
リーズナブルなコンパクトモデルをメインにその世界的なシェアを拡大していく。それこそがテスラの新しい戦略ではないのか。同時に市場での役割を終えたモデルにおける右ハンドル車の生産終了。これらはまさしく新たな戦略の第1歩ではないかと考えるゆえんだ。
そのほか、気になることといえばモデルSとモデルXの中古車市場での査定である。既に英国内では何らかの影響は必至といわれている。
ちなみに、テスラの中古車価格は新車の価格引き下げとともに低下傾向にあったのだが、今回の決定で右ハンドル中古車の価格が上昇しないとも限らない。この先、どう変わって行くのかその推移を見守りたい。