テスラはなぜ「右ハンドル車」を生産終了するのか? 一見マイナス施策に見えるも、背後にちらつく販売戦略の根本転換
テスラは同社の市販車中、モデルSとモデルXの右ハンドル仕様の生産終了を発表した。その背景には何があるのか。考察する。
根本的な販売戦略変更の可能性
とはいえ、オーストラリアとニュージーランド、ともにテスラはその販売台数を伸ばしているといわれている。すなわち市場的には極めて重要な地域であることは間違いない。そんな市場に対して、
「マイナスでしかない施策」
を何の考えもなしに取ることは考え難い。
一方、日本や英国では左ハンドル車の販売が禁止されているわけではない。日本に限っていえば左ハンドルであることも大きな問題ではないだろう。それに対して英国では左ハンドル車に対して違和感を覚える人が大多数である。その結果がキャンセルの殺到だったというわけである。
製造や物流上の問題という理由は、取りあえず筋は通っている。しかし筆者(剱持貴裕、自動車ジャーナリスト)にはほかにもっと大きな理由がある様にも思える。それはテスラの
「根本的な販売戦略の変更」
だ。モデルSとモデルXがデビューしたのはそれぞれ2012年と2015年である。ともに地道な改良を加えつつ現在に至っているが、昨今の急激なEV進化を前に既に旧式化しつつあることは否めない。
ちなみに、それぞれ右ハンドルモデルが英国での販売を開始したのは、左ハンドルモデルが発売された1年後の2013年と2016年からのこと。2021年までの販売台数は前者が1万1000台、後者が6500台とそれほど多くはない。
特に2017年にモデル3が、続いて2020年にモデルYが登場してからは、英国での販売はこの新しいコンパクトサイズの2モデルに集約されている。その台数は発売開始から現在までそれぞれ約9万台と約8万台とまさに圧倒的な数字だ。