テスラはなぜ「右ハンドル車」を生産終了するのか? 一見マイナス施策に見えるも、背後にちらつく販売戦略の根本転換

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テスラは同社の市販車中、モデルSとモデルXの右ハンドル仕様の生産終了を発表した。その背景には何があるのか。考察する。

右ハンドル車廃止の理由

主要11か国と北欧3か国の合計販売台数と電気自動車(BEV/PHV/FCV)およびHVシェアの推移(画像:マークラインズ)
主要11か国と北欧3か国の合計販売台数と電気自動車(BEV/PHV/FCV)およびHVシェアの推移(画像:マークラインズ)

 テスラの公式発表によれば、右ハンドル車廃止の理由は、シンプルに

「コスト高」

にあるという。

 本来は左ハンドルで設計されたものを右ハンドルへと変更するには、設計や部品の手配に加えて、完成した車両の保管や配送にも特別の流通経路が必要となる。

 すなわち、右ハンドル車の販売で得られる利益が、製造その他で掛かったコストに見合わないということだ。これは、クルマが右側通行の左ハンドル車に対して、左側通行で右ハンドル車が提供されていた地域が少なかったことも影響しているだろう。

 現在、クルマが右側通行の地域に対して左側通行の地域は圧倒的に少数派である。日本のほかには

・英国
・オーストラリア
・ニュージーランド
・香港
・マカオ

などが挙げられる。そのほか、東南アジアやアフリカにも左側通行の地域はあるが、絶対数は右側通行の方が多い。

 これらの地域のなかで最も大きな影響を受けるのは、左ハンドル車の販売が法的に不可能なオーストラリア、ニュージーランド、香港、マカオとなる。テスラはこれらの地域でのモデルSとモデルXの販売を必然的に中止するということだ。

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