EVの“低価格化”待ったなし? 「コスト削減 → 生産増加」のポジティブサイクルで、見えてきた世界普及の現実
一部では内燃機関車と同等以下の価格
これまではEVは内燃機関車よりも高いというイメージが強かったが、2023年に入り大きな転換期を迎えている。
例えば、2023年3月に内燃機関車を含めて世界で最も売れた車種(第1四半期全体でも1位との推定)となったEVであるテスラ モデルYは、米ブルームバーグの2023年4月報道によると、全米の自動車の平均価格を759ドル下回る4万6990ドル(調査時)で販売されている。
これは2023年初めの大幅な値下げによるもので、セダンのモデル3に至っては平均価格を7759ドル下回る3万9990ドルまで下がった。プレミアムセグメントとして分類されることが多いテスラ車だが、値下げとともに最も売れた車種となったことは、前述の調査結果を裏付けている。
当然ながら、この現象は米国に限ったものではない。例えばタイではBYDのDolphin、中国では同じくBYDのSeagull、英国やオーストラリアではMGのMG4が同クラスの内燃機関車と同等以下の価格を実現し、大幅な販売増加とEVシェアの上昇につながった。
特に、2023年4月に開催された上海モーターショーで発表と同時に受注を開始したBYDのSeagullは、発売初日だけで1万台を超える注文を獲得。同車は実用的な車体サイズで7万3800元(約145万円)~という低価格を実現し、同クラスの内燃機関車であるホンダ フィットの8万9800元(約177万円)~を大きく下回ったとして注目を集めた。
同展示会はそのインパクトの強さから「上海ショック」とやゆされたが、これは主役が内燃機関からEV、ハードからソフトに移ったことだけでなく、低価格帯のEVの充実も一因だろう。
なお、一般的にEVは交換が必要な消耗品が少なく税金や燃料代が安いことから、内燃機関車と比べて維持費が安いといわれている。これは5~10年程度の長期間の保有コストを比べたとき、多くの場合でさらにEVの方が安くなることを意味する。
また、電池の寿命や充電インフラ、使い勝手などのEVに対するよくある懸念点は、以下をはじめとした筆者(八重さくら、環境系VTuber)の関連記事(EVアンチをついに論破? もはや爆速普及が否定できない「8つの根拠」(2022年6月5日配信))でも解説しているので、合わせて参照されたい。