豪州企業が「圧縮水素船」を開発へ 日豪で進む液化水素の輸送計画にない圧縮の利点とは

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オーストラリアのグローバル・エナジー・ベンチャーズが圧縮水素船(C-H2 Ship)の開発を進めている。日豪間では液化水素の輸送計画も進んでいるが、「液化」ではなく「圧縮」を選択することについて、同社は複数の理由を挙げている。

2020年代半ばの運航開始を計画

圧縮水素タンクを搭載した船体(画像:グローバル・エナジー・ベンチャーズ)。
圧縮水素タンクを搭載した船体(画像:グローバル・エナジー・ベンチャーズ)。

 オーストラリアのグローバル・エナジー・ベンチャーズ(GEV)が、圧縮水素船(C-H2 Ship)の開発を進めている。風力や太陽光などの再生可能エネルギーで製造したグリーン水素を、250バールの圧力をかけて積載し、オーストラリアからアジアやヨーロッパに輸出するプロジェクトを想定。同社はすでに米国船級協会(ABS)から、大規模な商用運航で使用する積載容量2000トン型と、先行的に建造・運航する積載容量430トン型の2船型のAIP(基本承認)を取得している。

 GEVは2021年10月6日、ABSから430トン型圧縮水素船のAIPを取得したと発表した。2022年末までに船級承認を得て、2020年代半ばには運航を開始することを計画している。

 船体には250バールの圧力をかけた水素を貯蔵するため、独自設計となる直径12mの大型円形タンク2基を搭載。このタンクはステンレス製のライナーの周りに高強度のスチールを何層にも重ねた構造で、水素が鋼鉄の分子構造に入り込み、時間の経過で鋼鉄が脆くなる水素脆化を防げるようになっている。万が一、疲労亀裂が発生しても、その亀裂が発生した層を越えて成長することはないという。

 主要目は全長210m、全幅31m、深さ17m、喫水9m、運航速力15.5ノット。2020年代半ばに計画されているグリーン水素輸出プロジェクトでの使用を前提に、大規模な港以外でも荷役ができるよう船体はハンディマックスサイズに収めた。

 主機は、欧州舶用メーカーのバルチラと共同で開発を進める。天然ガスと水素を燃料として使用可能な高効率2元燃料(DF)エンジンを搭載し、2基の電気駆動固定ピッチプロペラや発電機と組み合わせて電気推進システムを構成する。荷役作業の効率化を目的に、船首と船尾のスラスターを用いて船体の位置を保持するDP(ダイナミックポジショニング)システムも採用する。

 運航に必要な電力を船内に供給する燃料電池は、カナダの燃料電池大手バラード・パワー・システムズの舶用燃料電池システム「FCwave」をベースに開発する。最終的には水素のみを動力源としたゼロカーボン運航の実現を目指す。

 今回、AIPを取得した430トン型の圧縮水素船は、西オーストラリア州のガスコイン地域から日本や韓国、シンガポールといったアジア地域へグリーン水素を輸出する「HyEnergyプロジェクト」で使用されることが見込まれる。