フォード、アルゴAI、ウォルマートが自動運転配送で協業へ 従来ビジネスからの脱却なるか
ECに注力するウォルマート、新型コロナで加速

フォード、アルゴAI、ウォルマートの3社は2021年9月、米国3都市(フロリダ州マイアミ、テキサス州オースティン、ワシントンD.C)での自動運転配送サービス開始に向けて協業すると発表した。
具体的には、ウォルマートの利用者がオンラインで注文した商品を、その利用者の自宅に直接ドアツードアで自動配送するというサービスで、この自動配送にはアルゴAIのシステムを搭載したフォードの自動運転車両が使用される。
アルゴAIは2016年に設立された自動運転ソフトウェアを開発するスタートアップ企業で、ペンシルバニア州のピッツバーグに本社を置く。
フォードが2017年に当時まだ創業わずか数か月、従業員10人程度のアルゴAIをおよそ10億ドル(約1100億円)で買収して話題になったが、その後フォルクスワーゲンからも26億ドル(約2860億円)の出資を受け入れている。現在、アルゴAIの株式はフォードが40%、フォルクスワーゲンが40%、そして残りの20%はアルゴAIの経営陣および従業員がそれぞれ保有している。
ウォルマートは言わずと知れた世界最大のスーパーマーケットチェーンで、アーカンソー州に本社を置く。
ウォルマートは他店よりも常に価格が安いことを売りにした「EDLP(エブリデー・ロープライス)」という販売戦略によって世界中で事業を拡大してきたが、近年はアマゾンに代表されるEC(eコマース=電子商取引)事業者にシェアを奪われていた。そこに新型コロナウィルスによるパンデミックが2019年末から起こり、ウォルマートだけでなく小売業界全体は営業時間の短縮とソーシャルディスタンスを意識した店舗入店人数の制限などによって、さらに追い打ちをかけられた格好となった。
ウォルマートはそうした状況に対応する形で近年はEC事業に注力しており、オンラインで注文した商品を客が自分で受け取ることができる「ピックアップタワー」「ピックアップロッカー」といった“商品の受け取り設備”の展開などに取り組んできた。しかし新型コロナの感染拡大の影響を受け、入店人数を制限するといった観点などからウォルマートはこれらの店内ピックアップ設備を廃止し、代わりに「オンライン・グロッサリー・ピックアップ(OGP)」に注力することを2021年に決定。OGPとは客があらかじめインターネットで注文した商品を店舗で受け取るサービスで、具体的には客が指定した店舗・時間帯にマイカーを店舗の専用駐車スペースに停めると、店員がトランクまで持ってきてくれるという仕組みになっている。現在はウォルマートのEC事業をこのOGPが牽引しているという。