ホンダF1復帰に感じる疑念と矛盾 40年「エンジン車全廃」いずこへ、ビジネスとしてのF1に正当性はあるのか

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ホンダは、2026年シーズンからF1へのパワーユニット供給に復帰することを公式に表明した。復帰という、従来の施策からの180度の方針転換は何を意味するのか。

過去との「矛盾」

年間チャンピオンに決まり、マクラーレンホンダのスタッフ、チームメイトのプロスト(右)と喜ぶセナ。オーストラリアで。1988年11月12日撮影(画像:AFP=時事)
年間チャンピオンに決まり、マクラーレンホンダのスタッフ、チームメイトのプロスト(右)と喜ぶセナ。オーストラリアで。1988年11月12日撮影(画像:AFP=時事)

 ここまで聞くと、ホンダの方針転換は180度から90度くらいに縮まった様にも思える。しかし疑問が完全に解消したわけではない。それは予算規模の問題である。

 ホンダによれば、今回の決定に伴って新たに計上されることとなるF1関連予算は従来のものよりかなり少なくなると説明されている。ただし従来の金額としてうわさされていた年間1000億円に対してどれだけ少ないかについては発表されてはいない。

 いくら少なくなるとはいえ、これから必要となるのはいずれも新技術が主となる。大幅な削減は難しいと考えるのが普通の感覚だろう。

 そうしたなかで、企業が

「ビジネスとして展開するF1活動」

に正当性はあるのか。株主を納得させるだけの企業価値の維持向上に効果があるのか。その可能性は正直未知数であるといわざるを得ない。

 もうひとつ気になるのは、せっかくe-fuelへの注力が決定したのにも拘わらず、市販内燃機関モデルへの採用についてはほぼ何も決まっていない点である。

 ご存じのとおり、e-fuelは2030年から欧州連合(EU)圏内で市販される新車のなかでBEV以外は全てこれを使用することが義務づけられることが決定している。将来的にこの決定が覆る可能性は少なくないものの、現時点では内燃機関モデルやハイブリッド車(HV)の新車がEU内で生き残る唯一の手段である。それに対してホンダが一切道筋を示さないというのは正直解せない。

 これは、2040年までに市販車は全て電動化するという先の決定との

「矛盾」

になるため、触れてほしくないのかもしれない。しかし、F1活動を通じて新たな道が開けたのであれば、選択肢のひとつとして可能性程度は言及してほしかった。

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