泥酔客を「鉄道に乗せない」時代到来か? 駅係員などへの暴力“飲酒がらみ”が7割超、止まぬ蛮行への最適解とは
イギリスの成功例
その理由として考えられるのは、そもそも日本では車内での飲食・飲酒が禁止されておらず、駅売店でもアルコールを販売しているのが当たり前だからだ。
海外事例と安易に比較できないが、交通機関がここまで飲酒に寛容なのは世界でもまれだ。外務省の「海外安全ホームページ」では、各国の安全対策基礎データを掲載している。
このうち、各国の「滞在時の留意事項」には飲酒に対する国ごとの規制が記されている。ざっと見ても、公共の場所で飲酒を禁じている国は多い。公共の場所には当然、駅や電車内も含まれる。
また、飲酒だけでなく車内でペットボトルを口につけることも禁止されている国は多い。イギリスではボリス・ジョンソンがロンドン市長だった2008年6月、市内の公共交通機関で飲酒を禁じる法律を施行している。この法律は飲酒はもちろんのこと、栓が開いた状態でアルコール飲料の入っている容器の持ち込みを禁止するものだった。
もちろん、すぐに効果を発揮したわけではない。むしろこの法律に反発した市民が施行前、地下鉄内で飲酒パーティーを開催し多数の逮捕者が出たほどである。それでも、法律を使って、
「強権的」
に飲酒を禁止することで、車内で飲酒したり、泥酔したりしている姿をさらすことが“恥辱”であるという意識を広げていった。とにかく
・法律で禁止されている
・恥ずかしい行為である
という意識の周知は、暴力行為を減らすひとつの方法だろう。
ゆえに、日本でも効果的な暴力を減らす方法としては、鉄道会社各社が車内での飲酒禁止を明文化し、駅売店でのアルコール販売を終了するといった対応が考えられる。
これは、決して難しいことではない。かつては、ホームで喫煙し吸い殻を線路にポイ捨てする姿は日常的だったが「駅構内は禁煙」を徹底したことで、行う人はいなくなった。飲酒に関しても
「酩酊(めいてい)者は改札をくぐることを拒否」
くらいの対応を徹底するのは可能なはずだ。