DXは現場に「誇り」をもたらすか 10年後の未来予測【ざんねんな物流DX #4】

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「すべての物流企業は、DXを目指すべきなのか?」── とても困難ではあるが、私は、すべての企業はDXを目指すべきだと考える。その理由を説明しよう。

自己肯定感が低い物流業界

DXの第一歩は競争力のあるビジネスアイデア(画像:photolibrary)。
DXの第一歩は競争力のあるビジネスアイデア(画像:photolibrary)。

「ウチのトラックドライバーは、馬鹿ばっかりだからさ」──私にこのように語った運送会社社長がいた。私は強い怒りを感じた。自社の従業員を馬鹿呼ばわりするとは、どういう神経の持ち主なのか。

 だが、同様の発言をする運送会社の経営者と私は複数回出会ったことがある。

「だから、IT化なんてやったところで無駄なんだよ」と言葉を続けた人。「なので、難しい荷役作業は、うちではできません」と仕事を断った人。中には、誤配送をしでかした言い訳や、改善基準告示を守ることができない理由として、このように発言した人もいた。

 どんな理由があろうとも、従業員を馬鹿と呼ぶのは駄目だ。物流業界を称して、4Kと自虐する業界関係者もいる。3K(きつい・汚い・危険)に「稼げない」を加えて4Kだという。

 あるトラックドライバーは、子供の授業参観の前に「うちの子供に発言するよう指名しないでください」と先生に頼みに行ったという。授業参観のテーマが「親の職業」と知ったからだ。自分がトラックドライバーであることを他の親の前で知られたくないのだと、当人は語ったそうだ。この話は、ある運送会社の役員から聞いた。

「物流業界で働いている人たちは、自己肯定感が低すぎます」──その役員は嘆いていた。

競合他社との差別化が図りにくい物流ビジネス

 運送ビジネスにせよ、倉庫ビジネスにせよ、トラックや倉庫といったハードが、ビジネスのベースとなる。だが、これらハードは既存規格の範疇にあることがほとんどであり、ハード面で、ビジネスの差別化を生み出すことは難しい。

 特殊な倉庫やトラック、もしくは自動倉庫ロボットなどを開発したり、競合と差別化につながるようなレベルで調達・利用することができたりするのは、潤沢な資本を備えた大企業が中心にならざるを得ない。

 中小も含めた一般的な物流企業が、競合と差別化を図ろうとすれば、どうしても荷役、流通加工、包装、もしくは物流に付帯する情報処理や付加サービスといった創意工夫で勝負ができるソフト面での勝負となるだろう。

 これは、とても難しい。当たり前だが、皆が思い付くような取り組みはすでに誰かが行っていて、競争力の原資とはなり得ないからだ。この難しいハードルを越え、競争力のあるビジネスアイデアを考えることこそが、DXへの第一歩となる。