EVとエンジン車のシェアは「数年」で逆転する? 過去の経済理論に見る業界の破壊的変化、EV普及は単なる「技術移行」ではない
中国EV御三家の代表が「中国のEVシェアは2025年までに80%を超える」と発言した。自動車業界に起きつつある変化を文明史的な視点から眺めてみると、その発言が大げさではないことがわかる。
「一本足打法」を失った後の日本の行方
歴史は繰り返すというが、日本の高度成長期を支えた産業が、バブル崩壊後の1990年代以降、
・半導体
・家電
・液晶
・太陽光発電
と次々に敗れ去り、衰退していった。その日本で、自動車産業は皮肉交じりに最後の「一本足打法」といわれる。
その自動車産業が存亡の危機にある。それもS字曲線やピーク理論に従うなら、EV車と化石燃料車とのシェア逆転は
「あと数年」
と、時間の猶予はない。
トヨタもEV専用のプラットホーム開発や蓄電池工場の投資に取りかかり、ホンダもソニーとの合弁会社や新型EVコンセプトの公表など矢継ぎ早に繰り出し始めたが、それらが実るのは早くても3年後だろう。
テスラと中国勢の進化と拡大のスピードを見ると、その前にすでに大勢は決しているのではないか。何せ、先行してEV開発に取り組んだフォルクスワーゲンやフォードでも歯が立たない状況なのだから。
その先に待ち受けるのは、ロイターのシニアエディター・田巻一彦氏が指摘するように、仮に日本の自動車産業の約17兆円もの輸出市場(2022年度)が消え去ると、貿易赤字(▲21.7兆円、2022年度)からついに経常赤字へと転落し、それが円信認の低下を招いてさらなる円安と輸入インフレ・物価上昇へと、負のスパイラルが起きるかもしれない。
ちなみに、貿易赤字の最大の原因は34兆円(2022年度)もの化石燃料の輸入だが、日本は再エネの普及にも後れを取ってしまっている。