EVとエンジン車のシェアは「数年」で逆転する? 過去の経済理論に見る業界の破壊的変化、EV普及は単なる「技術移行」ではない

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中国EV御三家の代表が「中国のEVシェアは2025年までに80%を超える」と発言した。自動車業界に起きつつある変化を文明史的な視点から眺めてみると、その発言が大げさではないことがわかる。

モビリティ分野の破壊的変化とは何か

EV普及拡大の可能性(画像:米RMI研究所)
EV普及拡大の可能性(画像:米RMI研究所)

 しかも、前稿までに見てきた世界全体のEV拡大の動向から、EV転換の主役はテスラや中国勢となり、レガシー自動車勢が衰退してゆく可能性が高い。そうなると、日米独などでこれまで産業経済の要石であった自動車産業が大崩壊する恐れがある。

 こうした、単なる「技術移行」ではなく、産業経済構造や社会のあり方も根底から大きく変わることを

「破壊的変化」(ディスラプションまたはディスラプティブ・チェンジ)

と呼ぶ。

 近年の破壊的変化の代表例にはiPhoneの誕生がある。iPhone以前と以後では、ITやコミュニケーションはもちろん、世界の産業経済の構造や社会のあり方、ライフスタイルなどが根底から変わったことを私たちは経験している。

 自動車分野の「破壊的変化」は、ICEからEVに変わるだけでも大きな構造的な変化である。なお、本稿では触れないが、電力分野でも太陽光発電と風力発電、そして蓄電池による破壊的変化が進行している。

 モビリティのEV化という破壊的変化が、電力分野の再エネ化とほぼ同時進行で起きることは、気候危機への対応として、またエネルギー安全保障やエネルギー自立の観点からは、希望が持てる変化であることを付言しておく。

 モビリティ分野では、EV化に加えて自動運転が実用化された時点で、EV化にとどまらない破壊的変化が起きるだろう。イーロン・マスクは

「自動運転にアップデートできないEV車を購入することは1919年に馬を買うようなものだ」

とツイートしている。

 最近の対話型AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」のビッグバンが好例だが、AIの急激な進化による自動運転の高性能化はいっそう進んでゆくことは明らかだ。そうなると、自動運転の実現は時間の問題で、どこかの国や地域での社会的合意と規制当局の許可を待つばかりだ。

 その後は、それが世界各地に広がってゆきながら自動車の所有や利用方法が根底から変わり、自動車産業はもちろん産業・経済・社会全般にわたる根底からの破壊的変化が不可逆的に進んでゆくことになるだろう。

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