2億円超の赤字! 高知「とさでん交通」の路面電車大ピンチ、公費負担拡大か路線縮小か、高知市検討会が大詰めの協議へ
高知県で路面電車を運行する、とさでん交通(高知県高知市)の経営が危機にひんしている。高知市は地域公共交通の検討会を設けて対応策を協議しているが、6月にも一定の方向を出す方針だ。
投資先送りで施設・車両の老朽化進行
とさでん交通の路面電車は、民間の土佐電気鉄道が長く運行してきた。しかし、車社会の進行で厳しい経営が続き、実質的な債務超過に陥ったことから、2014年にバス会社の高知県交通、土佐電ドリームサービスと経営統合し、とさでん交通が発足した。
出資金10億円は高知県が50%、残り50%を高知市35%など沿線や近隣の自治体が出した。事実上の公設民営で再スタートを切った形で、コロナ禍前の2018年度まで黒字経営をどうにか達成していたが、コロナ禍で一気に経営が傾いた。借入金は既に38億円に達している。
とさでん交通は「地域公共交通の役割を果たすため、全力を挙げる」としているが、内情は決算の数字以上に厳しい。頭が痛いのは必要な設備投資を先送りしてきたため、施設の老朽化が著しいことだ。高知市によると、路線の維持には年間8億円程度の設備投資が必要だが、とさでん交通が2026年度までの5年間に支出する予定は11億5000万円しかない。
レール交換には年4億3800万円必要なのに、投資額は3000万円にとどまっている。年1475万円必要な電線には720万円、年4億円必要な車両更新には8333万円しかかけられていない。
その結果、鉄道車両63両のうち、7割以上を車齢60年以上が占める。119か所ある停留場のうち、バリアフリー化できたのは35%。高知市交通戦略課は
「現状のまま設備更新を先送りし続ければ、持続可能な運行が難しくなる」
とみている。