自動車業界で「週休3日制」は実現可能なのか
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働き方改革が進められる現在の日本。日本の基幹産業である自動車産業で週休3日制は可能なのか。
創意工夫ができる成熟した人という条件
確かに人は枠や制約条件があれば、そのなかでなんとか創意工夫しようするため、労働時間が減ると現在のミッションをこなそうとアイデアを出す。そして、成果を維持できて、結果、生産性が上がるかもしれない。
「経営の神様」として知られる松下幸之助も
「3%だったら、今までの延長線上でコストダウンを考える。しかし、3割下げるには商品設計からやり直さなければならない。そうだとしたら、3割は無理ではない。やってみよう」
と、不可能に見える目標が創意工夫を生むといった(「週休2日制」は1965年に松下電器産業が初めて導入した)。私の人事経験においても、時短をしていく過程で実際そのような事例が多々見られた。
ただ、問題はそれが
「誰にでもできるのかどうか」
である。短時間で仕事をこなすためのよいアイデアが出る“成熟した人”はよいのだが、そうしたアイデアをまだ出せない未成熟な人はどうなるのか。
技術の蓄積による競争力に悪影響か
特に、週休3日制先進国の欧米が、
「職業訓練を十分に積んだ人」
を採用することが多いのと違って、日本、特に自動車業界をはじめとするメーカーは、主に新卒採用で未経験者を大量に採用し、社内で育成を行う雇用慣習が強い。
まだ十分に職務に必要な能力が身についていない未熟な社員にとって、
「時短の制約で同じ成果を出せ」
というのは大変困難なことだ。働き方改革によって、現在の日本はただでさえ長時間残業ができなくなり(そのこと自体はよいことだが)、若手が長い時間をかけて試行錯誤しながら能力開発に取り組むことができなくなっている。その上でさらに、休みが増えて、仕事をしない時間が増えても本当に大丈夫だろうか。