コロナ後の空港を襲う「地上業務員」の圧倒的不足! 最優先「待遇改善」も、具体性乏しく右往左往の現実とは
グランドハンドリングスタッフや保安検査員など、空港業務におけるマンパワー不足が深刻化している。このままでは「航空機の遅延」が慢性化する恐れがある。
待遇改善にともなう具体性の欠如
筆者(戸崎肇、経済学者)はこの問題について、長期的な取り組みを検討する有識者委員会に所属しており、同じく議論を重ねており、こうした提言はとても的を捉えたものといえる。その上でさらなる検討を要するとすれば、次のような点である。
まず、待遇改善の場合、具体的に何をどこまで改善すればよいのかということだ。
・不規則勤務
・旅客からの精神的圧迫
といった身体的・精神的ダメージを金銭的にどこまで補償すべきか――を具体的に算定するのはなかなか難しい。
また、受託料を引き上げても、それがどのくらい現場労働者に分配されるのかも見届けなければならない。資格の共通化は確かに有効に機能するだろう。ただ、その前に待遇改善が先決となる。
そもそも、こうした改善には時間がかかる。対応策は有識者会議で今まさに議論しているところだ。ただ、提言の結果をもって各事業会社が早急に改善を行うことは難しいだろう。それぞれ特有の事情もあるのだ。
まずは「スマートレーン」導入
また、この大きなふたつの改善案以外にも、
・外国人労働力の活用
など、さまざまな対応策が委員会以外で検討されている。ただ、現状の体制下で今すぐ実施できるものはあまりないように思われる。
そのなかで、スマートレーンの導入は保安検査業務にとって省力化につながり、即効的な効果があるものの、そのためには膨大は金額が必要となる。財政基盤の脆弱(ぜいじゃく)な地方空港などでは到底無理な話である。
だとすれば、大規模空港からとにかく導入するしかない。実際、旅客需要が急増し、人員不足が特に顕在化しているのはそのような空港だからである。