トラックドライバー不足を「外国人労働者」で穴埋めしようとする発想の耐えられない軽さ

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移民受け入れの是非が現実的な問題となっているなか、トラック業界でも外国人労働者導入に向けた本格的な検討が始まっている。そこに問題はないのか。

時代錯誤的な全ト協

トラックドライバー(画像:写真AC)
トラックドライバー(画像:写真AC)

 全日本トラック協会が求めている外国人労働者の導入とは、どういうものか。2023年度版の事業計画書には、次のように記されている。

「外国人労働者の導入に向け、国内免許の取得や政府の有識者会議における制度見直しなどの課題はあるものの、一連のドライバー業務を外国人在留資格の「技能実習」に追加することについて引き続き関係機関と調整を進める。また、労働力確保を目的とした「特定技能」についても、関係機関と調整を進める」

「技能実習」とは、いわゆる外国人技能実習制度のことだ。これは、日本で得た技術や知識を開発途上国へ移転することで、国際協力を図ることを目的とした制度だ。現在は、2017年に施行された「外国人の技能実習の適正な実務及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」によって、運用されている。

 しかしこの制度が、技能実習とは名ばかりの低賃金労働者を確保する手段となっていることは、これまでも数多く報道されている。

 この制度では90種類を超える職種で外国人を雇用することが可能になっている。建前では開発途上国の出身者に技術を継承することとされているが、実際には

「低賃金で外国人を雇用する手段」

として悪用されている。

 この制度で来日した外国人は転職が禁止されているため、低賃金どころか賃金未払いも横行、劣悪な環境で身柄を拘束され働いている。長野県川上村の特産品であるレタスの収穫や北海道猿払村のホタテの殻むきは、外国人実習生なしには成り立たない産業とされている。

 しかし、そうした単純労働に従事させる行為が技能実習となっているとは考えられず、幾度も問題として取り上げられてきた。そして、2023年4月には政府でも制度廃止に向けた検討を本格化させている。

 既に批判が殺到し、廃止議論すら持ち上がっている制度を取り上げて「引き続き関係機関と調整を進める」とする全日本トラック協会の方針は、あまりにも時代錯誤的だ。

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