“アイス事件”で中国人が怒るのは当然だ 上海モーターショーで見えた「アジア人差別」という時代錯誤な価値観、日本の真摯な姿勢が問われている

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中国の「アイス事件」に対する怒りがアジア全土へと広がりを見せている。この騒動は、欧米における「アジア人差別」がいまだになくならない証左なのか。

欧米人のようにふるまうアジア人

北京の街並み(画像:写真AC)
北京の街並み(画像:写真AC)

 前述のとおり、アイス事件では差別への怒りだけでなく、動画に登場したスタッフを特定しようとする動きも出た。この背景には、自分たちと同じ中国人にもかかわらず、まるで

「欧米人の一員になったかのようなふるまい」

への怒りがある。

 日本でも、海外在住者がSNS上で自ら長く生活する国の価値観によった発言をして炎上することがある。いわゆる「出羽守(でわのかみ)」だ。

「「海外では」「他業界では」のように、何かにつけて他者の例を引き合いに出して語る人のこと。多くは揶揄(やゆ)の気持ちをこめていう」(小学館デジタル大辞泉)

こうしたものへの怒りは、もはや理屈を通り越している。

反米映画が大ヒットする中国

映画『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』(画像:KADOKAWA)
映画『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』(画像:KADOKAWA)

 騒動のもうひとつの背景には、中国と欧米が政治的に対立していることも関係している。

 中国人の多くは社会制度や政治に対して常に不満を抱えている。よほど熱烈な愛国者でない限り、総書記の習近平に対してネガティブな感情を抱えている。ただ、大多数の人は

「中国は確かにひどいが、欧米はさらにひどい。お前たちにいわれたくない」

という意識も持っている。問題のある中国政府が対立している欧米もまた悪であるという認識が中国人の常識なのだ。

 これを容易に理解できるのが、2017年に中国で大ヒットした映画『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』である。

 ハリウッドからスタッフを招いて制作されたこの映画は、アフリカを舞台に元中国軍特殊部隊員の主人公が、現地の人たちなどを助けながら、悪の民間軍事企業と戦うストーリーで、悪はすべて白人と黒人というわかりやすい構成である。

 この映画が喝采を受けたことからも、中国人の欧米への見方が理解できるだろう。

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