街の「EV充電器」はなぜ全然増えないのか? 事情は想像以上に複雑、もはや「鶏と卵」論争している場合ではない

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EVの普及にはさまざまな課題が立ちはだかっている。そのうちのひとつに充電インフラの整備がある。しかし現実は遅々として進んでいない。いったいなぜか。

標準化の欠如

EV充電器(画像:写真AC)
EV充電器(画像:写真AC)

 充電器やコネクタの標準化が進んでいないことも、EV充電器の普及を阻む要因となっている。

 例えば、日本と米国では普通充電の規格は「J1772(Type1)」と共通だが、急速充電の規格は日本が「CHAdeMO(チャデモ)」であるのに対し、米国では「CCS1」規格を採用している。

 また日本のEV市場でも大きなシェアを有するテスラは独自規格の「TPC」を採用している。そして欧州・中国ではまた日米とは違った独自の規格を採用しており、グローバルで見るとさまざまな企画が存在していることになる。

 充電器メーカーや充電ステーション運営業者は、日本においては日本で主流となっているJ1772(Type1)/CHAdeMOを採用するのが無難であるが、やはり一部のEV所有者を疎外する可能性は必ず残ってしまう。

 現在、日本と中国が新たな超急速充電規格「ChaoJi(チャオジ)」の開発/普及を共同で進めるなど、規格の統一化に向けた動きも出てきている。

 この問題の解決にはやはりそうした世界統一充電規格の可能性に関する取り組みや、輸入車など異なる充電規格に対応した車両を保有するユーザーも快適に利用することができるような、計画的な充電器整備計画などが必要となってくる。

電力網の制約

ビルに囲まれた電柱(画像:写真AC)
ビルに囲まれた電柱(画像:写真AC)

 EVの普及に伴い、充電のための電力需要も増加している。この増加した電力需要に対応するための問題もある。

 地域によっては、既存の発電/送電網では電力需要増加に対応することができず、そもそもEV充電器を設置することが困難であるケースも存在する。

 現在日本では経産省が主導する形で、EV充電器に遠隔制御機能を搭載することを義務化する方向で検討が進んでいる。これにより電力需給がひっ迫しているときには充電器の利用を制限し、電気が余っている時間帯には安い電力で自動充電を行うといった、電力グリッド視点での新たな充電サービスの確立に取り組んでいる。

 このように、EVの普及が電力網に与える影響を検証し、既存の電力網をアップグレードするだけでなく、スマート充電技術や分散型エネルギーリソース運用支援サービスの開発など、電力グリッド視点からの取り組みも必要不可欠だ。

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