街の「EV充電器」はなぜ全然増えないのか? 事情は想像以上に複雑、もはや「鶏と卵」論争している場合ではない

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EVの普及にはさまざまな課題が立ちはだかっている。そのうちのひとつに充電インフラの整備がある。しかし現実は遅々として進んでいない。いったいなぜか。

高いイニシャルコスト

EV充電器(画像:写真AC)
EV充電器(画像:写真AC)

 まず、EV充電インフラの普及が遅れている主な理由のひとつに、充電スタンドの設置に伴う初期コストの高さが挙げられる。

 企業や自治体など、充電設備の設置や維持管理を行う事業者にとって、充電設備1基の設置/維持にかかる費用は大きな経済的負担となる。

 例えば日本では、設置する充填(じゅうてん)機の種類や設置場所によって金額は大きく変動するが、平均的な普通充電器の本体価格は1基あたり10~100万円程度、設置費用は20~100万円程度、年間維持費は10~20万円程度となっている。

 急速充電器になれば、この費用はさらに高くなり、

・本体価格:80~500万円
・設置費用:100~600万円
・年間の維持費:30~120万円

と、多額の費用がかかる。

 ここに国や地方自治体からの補助金が入るとはいえ、そのコスト負担は大きいものであり、さらに必要な許認可の取得や各種規制への対応によっては、さらなる費用負担が発生することもある。

 この問題の解決には、やはり国や地方自治体からの継続的な補助政策と、技術革新や量産効果による充電器本体/設置費用/維持費の低減が求められる。

限られた収益性

主要メーカーの電気自動車販売台数推移(画像:マークラインズ)
主要メーカーの電気自動車販売台数推移(画像:マークラインズ)

 EV充電ステーションの収益性は現状低いのが実態であり、新たにEV充電器を設置しようとする事業者や投資家がなかなか増加しない、というのがもうひとつの課題である。

 その原因としては、日本においてはまだEVの普及が進んでいない(2023年3月の販売台数ベースで約3%)ことが挙げられ、必然的に充電インフラの利用率は低くなってしまう。

 充電器のネットワークが充実していなければ消費者はEVの購入をためらい、逆にEVが相当数走っていなければ充電ステーションに投資するインセンティブはほとんどないという、冒頭に述べた「ニワトリとタマゴ」の問題が発生する。

 ゆえに、この「ニワトリとタマゴ」の問題をインフラ(充電器の整備)側で解決するためには、EV充電ビジネスの経済性をより深く、詳細に分析し、充電ステーション運営事業者の

「投資収益率」

を向上させることができる新たなビジネスモデルの開発や、新たなパートナーシップ形態の可能性を探る必要があるといえる。

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