楽観的すぎ? 二輪の脱炭素対応 交換式バッテリー実験1年も成果示されず 自工会会見

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日本自動車工業会の豊田章男会長がカーボンニュートラルへの強いメッセージを発した一方で、バイクの将来像は漠としたままだ。交換式バッテリーという唯一示されている選択肢はどうなったのか。会見で語られたのは、「遠い将来」だった。

「実験に手応え」 しかし着地点は2050年?

2020年8月、大阪大学で開催された「eやんOSAKA」発表会。自工会会員の国内メーカー4社と大阪大学大学院工学研究科の関係者(中島みなみ撮影)。
2020年8月、大阪大学で開催された「eやんOSAKA」発表会。自工会会員の国内メーカー4社と大阪大学大学院工学研究科の関係者(中島みなみ撮影)。

「(実験)応募者の半数以上が二輪車に初めて乗る人で、新規需要の手ごたえも感じている」。日高氏は実験をこう評価する。しかし、自動車業界が目指すカーボンニュートラルの目標は、極めて高い。

「2030年削減目標は、今後10年間で、過去20年間と同等レベルの削減をするというチャレンジングなもの」(永塚専務理事)。そのため二輪車は今のところ自動車産業としての削減対象には入っていないが、与えられた猶予期間を有効に使っていることになるのだろうか。

「電動二輪車の普及には航続距離の延長、充電時間の短縮などの課題があり、すべての二輪車の電動化は難易度が高いと考える」と、カーボンニュートラル対応の困難さを日高氏はたびたび口にする。豊田会長は「内燃機関は敵ではない。敵は炭素だ」と語ったが、二輪車にとっての内燃機関、特に小型コミューターは、高い環境性能と低コストをバランスさせている。それを超える選択肢が見いだせないことが最大の問題だ。

 そんな中で「eやんOSAKA」は、前出の通り、自工会が掲げる二輪車カーボンニュートラルの唯一の目に見える対応であり、自動車業界の挑戦だ。だから、ここでバッテリーステーションでの交換方式に疑問符が付くのであれば、すぐに別の選択肢を模索する必要があるだろう。

 だが、その別の選択肢は示されていない。

「電動化以外のソリューションも視野に、2050年のカーボンニュートラルに向けて、二輪車産業としても最大限取り組んでいく」
「排気量、ユーザーの用途、地域性によって最適なカーボンニュートラルパワートレインのあり方が多様だと考えている。2050年までの時間軸で考えると、電気だけでなく水素、合成燃料の選択肢も出てくる」

 こう話す日高氏の視線は遠い将来にある。現状の自工会は、小型コミューターという限られたジャンル以外、特に大型クラスでは、構想すらユーザーに与えていない。

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