自動車は「社会のガン」 ノーベル賞に最も近い日本人経済学者はなぜ自動車を大批判したのか? 事故・公害・犯罪を誘引、SDGs社会で再考する

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「ノーベル経済学賞に最も近い日本人」といわれた経済学者・宇沢弘文。そんな宇沢はなぜ自動車の存在を非難したのか。改めて考える。

社会的費用は低下も残る課題

宇沢弘文『自動車の社会的費用』(画像:岩波書店)
宇沢弘文『自動車の社会的費用』(画像:岩波書店)

 最後の新古典派批判については「経済学とはあくまでも経済的観点からの分析である」といった応答もあるだろう。

 ただ、ひとりの人間が失われたことの損害を市場における

「金銭的評価のみで捉えようとする考え」

は、例えば障害者の逸失利益などをめぐって今後も問題化されつづけることは確実だと思われる。

 自動車の社会的費用は低下したとしても、経済的な効率以外を捨象してしまいがちな経済学やそれに基づいた政策の問題は残っている。

 こうした点からも本書は出版から半世紀近くがたとうとしているにもかかわらず、いまだに

「現役」

であるといえるだろう。

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