自動車は「社会のガン」 ノーベル賞に最も近い日本人経済学者はなぜ自動車を大批判したのか? 事故・公害・犯罪を誘引、SDGs社会で再考する

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「ノーベル経済学賞に最も近い日本人」といわれた経済学者・宇沢弘文。そんな宇沢はなぜ自動車の存在を非難したのか。改めて考える。

二酸化炭素排出量の16%は自動車由来

運輸部門における二酸化炭素排出量(画像:国土交通省)
運輸部門における二酸化炭素排出量(画像:国土交通省)

 公害についても改善が見られる。

 本書の74~75ページの第2表に1970(昭和45)年前後の大気汚染物質の状況が示されているが、そこにあがっている一酸化炭素や窒素酸化物、亜硫酸ガスの状況を環境再生保全機構のウェブサイトの「大気環境の情報館」の「環境濃度の推移」で確認すると、自動車から排出される一酸化炭素、二酸化硫黄、窒素酸化物(二酸化窒素)について、いずれも改善していることがわかる。この面でも自動車の社会的費用は下がったといえる。

 ただし、本書が刊行された時点で想定されていなかった自動車の社会的費用が地球温暖化への影響である。

 国土交通省のウェブサイトによると、2020年度における日本の二酸化炭素排出量のうち、運輸部門は17.7%を占め、運輸部門の87.6%を自動車が占めている。つまり、日本の二酸化炭素排出量の

「15.5%」

が自動車から排出されていることになる。

 運輸部門において、航空の占める割合が2.8%、内航海運が5.3%、鉄道が4.2%ということを考えると、やはり自動車の排出量は大きい。

 21世紀に入ってから、自動車から排出される二酸化炭素の量は減少傾向にあるが、政府が2050年までにカーボンニュートラルを目指すとしているなか、自動車部門におけるさらなる二酸化炭素排出量の削減が求められることになるだろう。

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