陸自ヘリ墜落をなぜか「中国撃墜」認定 防衛省否定もどこ吹く風、“陰謀論”界隈に蠢く懲りない面々とは
陸上自衛隊のヘリコプター墜落事故の報道を受けて、「本当は中国に撃墜されたのではないか」という臆測がSNS上などに拡散された。なぜ陰謀論は生まれるのか、そして陰謀論を生むのは誰なのか。
ヘイトクライムを誘発する陰謀論
怖いのは、政治家や軍人など、本来なら
「最も信頼されるべき人物」
が、しばしばデマや流言を都合よく利用するという歴史的事実だ。
例えば、ユダヤ人差別の源流となった陰謀論は中世ヨーロッパにさかのぼるというが、その陰謀論を操ってドイツ国民を扇動したのがヒトラーであった。日本の場合も、1発の銃声を中国軍の攻撃だと臆断して戦闘を開始したのが、日中戦争の引き金となった盧溝橋事件(1937年)だ。
とりわけ国家や民族に対する憎悪を増幅させる臆測や陰謀論は、身近なところで
「ヘイトクライム(特定の社会的集団への偏見や差別に動機づけられた暴力など)」
の誘発につながるだけでなく、多くの人命や国家の存亡にさえ関わる決定を左右することさえある。
事実を知りたいという欲求は悪いことではなく、人間には必ず備わっている性質だが、真偽のあやふやな情報がもたらす危険性は決して小さくない。
UH-60JA撃墜説が拡散される日本の状況には、どうしても恐ろしさを感じずにはいられない。