「年収さえ上げれば、トラックドライバーは増える」は間違い! 運送業界を停滞させる複合要因、求貨求車サービスの課題から考える
「物流の2024年問題」を筆頭とする物流クライシスの解決手段として注目される求貨求車サービス。だが本当に求貨求車サービスは物流クライシスの救世主となりうるのだろうか。
原価を把握していない運送会社

なぜこのようなことになるのか。原因のひとつは、運送会社の多くが求貨求車サービスへの入札に限らず
「勘と経験」
で運賃を決定していることにある。
東京都トラック運送事業協同組合連合会は、「保有車両1台あたりの原価(輸送コスト)を把握しているか?」というアンケートを行った。結果は次のとおりである。
・全車両の原価を把握している:37.4%
・一部の車両の原価を把握している:42.1%
・全く把握していない:20.5%
原価を把握せずして、どうやって運賃を決定するのだろうかと思う。だが現場では、「この行程で大型か……だったら〇〇万円でいいだろう」といった、担当者の勘と経験で、運賃が決定されてしまうことが多いのだ。
ちなみに、「輸送コストを度外視して受注することがあるか?」というアンケートでは、次のような結果が得られた。
・時々ある:46.2%
・ほとんどない:52.7%
・頻繁にある:1.2%
これはあくまで特定の業界団体における調査結果ではある。だが、国内にある6万2000社強の運送会社全体を見ても、この結果と大きく結果外れることはないだろう。
原価計算をしっかり行っている運送会社は、全体の4割弱しかなく、全く原価を把握していない運送会社が5社に1社ある。しかも、半数近くの運送会社が、赤字覚悟で受注することがある。
どんぶり勘定で経営をしていて、もうかるわけがない。ましてやドライバーの待遇改善、収入アップなど夢のまた夢だ。これが運送業界の実態なのである。