長崎「島原鉄道」崖っぷち 将来はBRTか上下分離か 立ちふさがる「運転手大量確保」の壁、県の指針が今問われる
長崎県は島原鉄道の将来像について本格的な検討に入る。国と県の支援期間が2023年度で切れるためで、BRT化や上下分離が検討される見通しだ。
財政力指数の貧弱な沿線自治体

ただ、沿線自治体の人口は、諫早市が13万人余りいるものの、島原市や雲仙市は約4万人にとどまる。
駅や線路など鉄道施設を自治体が保有する上下分離方式を導入し、鉄道会社の負担を軽減したところでどこまで支え続けられるのか、疑問が残る。
基準財政収入額を基準財政支出額で割った財政力指数は、2020年度で
・諫早市:0.55
・島原市:0.45
・雲仙市:0.28
となっている。
この指数は「1」になると、すべての財政支出を自前の財源でまかなえることを意味し、沿線自治体の財政力の弱さを示している。島原市政策企画課は
「鉄路を残したいが、多額の出費に耐えられるかどうかは分からない」
と口ごもった。
バス転換にもマイナス要素

廃線跡を専用道路とするBRTは宮城県の気仙沼線など各地で導入されているが、最大のメリットは定時性確保だ。
渋滞が深刻な都市部ではその力を存分に発揮できても、交通量が少ない地方では大きなメリットになりえない。線路跡の専用道を走るバスに転換しながら、多くの区間で一般道を走るように切り替えた福島県の旧国鉄白棚線の事例もある。
路線バス転換は1車両当たりの輸送力が列車に劣るため、人手不足のなか、
「運転手を大量に確保」
しなければならない。
訪日外国人観光客はバスより鉄道で移動できる場所を選ぶ傾向があり、観光で地域振興を図るとなると、バス転換がマイナス要素となりかねない。
進むも地獄、退くも地獄という厳しい状況が予想されるが、諫早市生活安全交通課は
「沿線住民の目線で最善の選択をしていきたい」
と希望を捨てていない。
基幹産業の農林水産業低迷から観光が最後のとりでとなりそうななか、長崎県はどのような結論を選択するのだろうか。