日本「米国追随」にいら立つ中国 反スパイ法改正で駐在員どうなる、変化の政治力学を読み解く

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米中対立や台湾情勢など、日本を取り巻く世界情勢が厳しくなるなか、中国・北京で3月、50代の日本人男性がスパイ行為などを取り締まる国家安全当局に拘束された。

日本企業が警戒する駐在員拘束

米中対立のイメージ(画像:写真AC)
米中対立のイメージ(画像:写真AC)

 米中対立や台湾情勢など、日本を取り巻く世界情勢が厳しくなるなか、中国・北京で3月、50代の日本人男性がスパイ行為などを取り締まる国家安全当局に拘束された。

 男性は大手製薬会社アステラス製薬に勤め、中国での駐在歴が20年になるベテラン社員で、異動で日本に帰国する当日に連絡が取れなくなったという。中国政府も国内の刑法と反スパイ法に違反した疑いがあるとし、男性を拘束して取り調べを行っていることを認めた。

 中国では2014年に反スパイ法が施行されたが、その後拘束される日本人が相次ぎ、今回の男性で17人目にとなる。反スパイ法による容疑の裁判は常に非公開で、中国当局はどのような行為が法律に違反したかこれまで説明したことがない。

 しかも、中国全人代の常務委員会は2022年末、国内でのスパイ活動の摘発強化を目的とした反スパイ法の改正案を発表した。改正案は夏には可決される予定となっている。

 現行法のスパイの定義が大幅に拡大され、摘発対象となる範囲も現行の機密情報から

「機密情報に関連する資料やデータ、文献」

も含まれるようになり、中国国家安全当局の権限やスパイ行為による罰則も強化されるという。スパイ行為の定義の拡大により、中国当局の恣意(しい)的乱用が顕著になり、さらなる邦人の拘束につながることが懸念される。

 本稿では、中国に進出している日本企業が最も警戒する駐在員の拘束について、政治力学の変化から考えてみたい。

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