空飛ぶクルマ「2億円」は妥当か、はたまた法外か? 知られざる“購入リスク”と発表タイミングに迫る
2億円という価格
「空飛ぶクルマ」を開発しているスカイドライブ(愛知県豊田市)は4月13日、個人向けの機体販売を開始したことを発表した。納期は2025年以降としており、価格は150万ドル(約2億円)とのことだ。
さすがに自家用車とは比較できないが、航空機の世界で見ると、
「単発タービン・エンジンで4人乗りの小型自家用ヘリコプター」
に近い価格帯である。
具体的には、ロビンソンR66やベル505といった機種が、新造機で1億~2億円程度とされている。これらに比較すると、話題性や新奇性のあるSKYDRIVE SD-05(以下、SD-05)の2億円は、
「納得できない値段」
ではない。
また、SD-05が受注を集めることができた場合、この価格ならスカイドライブも採算が取れるのではないだろうか。
なぜ販売に踏み切ったのか
一方で、空飛ぶクルマも航空機の一種として、国による安全性の管理や規制が及ぶ。
実際に販売や運用を開始するには、スカイドライブが国の型式証明を取得し、使用者も耐空性を維持する整備が義務付けられるだろう。しかし、空飛ぶクルマの型式証明審査基準や運用の規制については、
「国際的にも検討が進んでいる最中」
で、まだ法整備が追いついていないのが現状だ。
納期が2025年以降となっているのは、型式証明の取得や法整備に必要な期間も見込んでのことだろう。
こうした早い段階でスカイドライブが個人向け販売に踏み切ったのは、販売による収益の確保というより、先行事業者として空飛ぶクルマを取り巻く
「法整備のイニシアチブを握る」
狙いがあるのだろう。
国土交通省(以下、国交省)による法整備と並行して市場からの受注実績を作っておけば、法の内容についての議論にも事業者として主導的な立場で関わることができる。
もし外国企業の市場参入などが先行すれば、国内での法整備も欧米の後追いになり、日本のメーカーは不利な戦いを強いられかねない。