オートマ限定者が“熟練ドライバー”に大変身? いま、トラックの操作性が増しているワケ

キーワード :
, ,
いすゞエルフが17年ぶりにフルモデルチェンジを実施した。新型トランスミッションの採用はトラックドライバーへの一助となるか。

デュアルクラッチメカ採用拡大のワケ

ISIM(画像:いすゞ自動車)
ISIM(画像:いすゞ自動車)

 本来はスポーツドライブのためのものだったデュアルクラッチトランスミッションが。トラックへと採用が拡大されたのには明確な理由があった。

 それはイージードライブ(誰でも簡単に運転ができる操作性)という意味では申し分無かった通常のトルクコンバーター/プラネタリーギア式のオートマチックトランスミッションではあったものの、トラック特有の運転環境化での操作上の違和感が拭えなかったことである。

 具体的には、

・フル積載での登坂路といった大きなトルクが必要な状態では、変速タイミングのわずかな時間に駆動輪への瞬間的なトルク抜けが生じやすかったこと
・それぞれのギアがカバーしているエンジン回転域が比較的大きいことが理由のシフトアップ/ダウン時の変速ショックがあったこと
・ギアが切り替わった時のエンジン回転数の変化が大きかったこと

などである。要するに実際に運用する上でのドライバビリティ(車の運転のしやすさ・操作性)上の欠点をクリアできていなかったということである。

 ちなみにいすゞは古くは1980年代から1990年代に掛けてのNAVI5、そして2000年代初めという早い時期からスムーサーという名のクラッチ操作を自動化した機械式オートマチックトランスミッションを実用化しており、スムーサーの進化は中型車と大型車では今も続いている。ただしこちらのクラッチは1セットであり、エルフでのデュアルクラッチ化はさらなるドライバビリティの向上を目指したものだった。

 いすゞISIMはデュアルクラッチによるスムーズな変速動作に加えて、ギア数を従来型乗用車用デュアルクラッチトランスミッションの主流だった7速から9速へと増やした。これによってトランスミッションがカバーする速度域が低速から高速まで幅広くなり、同時にそれぞれのギアがカバーする範囲は狭くなった。

 こうした隣り合ったギア同士の歯の数、すなわちギア比の差が小さなトランスミッションを一般にクロスレシオトランスミッションと呼び、エンジンが発生するトルクの一番力強いところをしっかりと活用し勾配が変化する道などで速度を一定に保つ上では極めて有効である。

全てのコメントを見る