燃料電池車の需要拡大阻む「EV技術革新」というジレンマ 日本政府の水素増産計画にみる、戦略的姿勢の重要性とは
日本政府は2023年5月、「水素基本戦略」を改訂する。その骨子は“攻めの戦略”である。吉と出るか凶と出るか。また戦略の最大の懸念とは何か。
EVの技術革新が握る命運
ここまででわかる通り、日本は水素を有効活用する技術力や商品力の点では優れたポテンシャルを持っている。問題はあくまで
「水素の製造能力」
であり、今回の基本戦略の背景にあるのもまさにそうした懸念の解消にあることは間違いない。
これら新たな水素基本戦略とは別に、日本が掲げている
・2030年度までに2013年度比で温室効果ガスの46%削減
・2050年までに実質ゼロとするカーボンニュートラル政策
に変化はない。今後の水素の有効活用次第で、この目標が実現できるかどうかが大きく左右されることは間違いない。
最後に、これらの水素基本戦略に対する最大の懸念は、
「EVで決定的な技術革新が実現する」
ことである。燃料電池車こそは水素戦略の紛れもない中核である。それよりもバッテリーを使った電気自動車が全てにおいて有利となれば、燃料電池車はその価値を失う。
仮にそうなったら水素はどのように活用すべきか。また新たな戦略の構築が必要となるだろう。