わずか15年で廃線 愛知県「桃花台線」が遺した都市計画という名の“無理難題”、そして落日のニュータウン

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小牧駅から桃花台東駅までを結び、開業からわずか15年で廃止された桃花台線。いったいなぜこのような結果になったのか。

広島市でも同様の悲劇

広島短距離交通瀬野線のみどり口駅(画像:(C)Google)
広島短距離交通瀬野線のみどり口駅(画像:(C)Google)

 需要を見誤ったために路線が廃止される事例は、桃花台線以外にもある。2023年末で廃止が決まった広島県広島市の広島短距離交通瀬野線(スカイレール)も、そうした事例のひとつだ。

 同路線はみどり口駅と高台にあるみどり中央駅を結ぶ。ゴンドラ型車両は、高架レールの上を約5分で行き来する、全国でもほかに例のない珍しい交通機関である。

 1998(平成10)年に運行を開始した時点では、1日の利用者は5000人以上とされていた。しかし、実際には1日の利用者は1300人程度にしかなからなかった。この住宅地は決して不人気ではない。整備区画はほぼ完売し、2260世帯7300人が暮らしている。ところが、7300人の人口に対して、1日の利用者が5000人以上という予測は完全に外れてしまった。

 この予測はもともと、

「全世帯でひとりが1日に一往復程度利用する」

と想定したものだ。冷静に考えれば過剰さを指摘する人もいそうだが、計画されたのがバブル期だったこともあり、ザルな予測に誰も異論を唱えなかった。実際、宅地内には駅がわずか2駅しかないこともあり、歩いたほうが早い人も多く、利用が低調なまま推移した。

 また、このシステムは全国唯一ということもあり、整備費もかさんだ。開発した三菱重工業と神戸製鋼所は、同様の高台につくられた宅地での普及を期待していたが、まったく採用されなかった。

 ただ廃止が決まって以降、住民の中には懸念もあるという運行終了後は、EVバスへの転換が予定されているが、朝には自家用車で通勤する人も多く、定時運行が困難になるとも見られているからだ。果たしてこの廃止が英断だったか否かは、現時点でまだ判断できない。

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