わずか15年で廃線 愛知県「桃花台線」が遺した都市計画という名の“無理難題”、そして落日のニュータウン

キーワード :
, ,
小牧駅から桃花台東駅までを結び、開業からわずか15年で廃止された桃花台線。いったいなぜこのような結果になったのか。

アクセス問題で住民がバス路線開設

桃花台ニュータウンと高蔵寺駅の位置関係(画像:(C)Google)
桃花台ニュータウンと高蔵寺駅の位置関係(画像:(C)Google)

 通例、鉄道路線(桃花台線は新交通)が開通すれば、利便性が増して人口は増えると考えがちだ。しかし、桃花台ではそうはならなかった。それは、桃花台線が「陸の孤島」を解消するにはほど遠い存在だったためだ。

 もともと桃花台線は、名鉄小牧線小牧駅から桃花台ニュータウンと高蔵寺ニュータウン(春日井市)を経由してJR中央線高蔵寺駅に至る路線となる予定だった。しかし、入居開始から11年も遅れて完成したのは、計画の半分にあたる小牧駅から桃花台東駅まで。高蔵寺駅までは一部の土地買収が終わったのみで、工事すら行われていなかった。

 このため、鉄道利用で名古屋市内に通勤通学するためには、小牧駅経由となる。ところが、当時の小牧線も利便性に欠けていた。というのも、2003(平成15)年3月まで同線は名古屋市営地下鉄と接続しておらず、名古屋市内へ行くには、上飯田駅(名古屋市北区)でバスに乗り換えなければならなかった。

 さらに、入居開始から桃花台線の開通まで11年もかかったツケが大きかった。この間、桃花台の住民にはマイカー利用を前提とするライフスタイルが確立されていた。結果、名古屋市内へ通勤通学する住民は、マイカーで高蔵寺駅や春日井駅を利用するようになっていた。このようなライフスタイルが確立していたため、住民は桃花台線よりもJRに接続できる春日井市のふたつの駅と、名古屋市へのアクセス向上を期待していた。

 住民の声を反映する形で、1992年には高蔵寺駅行きのバス路線が開設されている。さらに2001年10月には、名鉄バスが高蔵寺駅経由で名古屋都心を結ぶ高速バスの運行を開始している。それだけでなく、2002年には住民が主体となって会員制組織をつくり、バス会社に運行を委託する形で、JR中央線春日井駅までのバス路線が開設している。住民主体でバス路線が開設されるあたり、いかに桃花台線の利用価値が低かったかが見てとれる。

 当初、都市計画は市内の工場労働者の社宅要素を重視して進められた。しかし実際、

・名古屋市内へ通勤通学する者が多かった
・街は小牧市より春日井市と密接なエリアとして成長した

など、計画と現実の齟齬(そご)によって、桃花台線は無用の長物となってしまったのである。

全てのコメントを見る