サイクルスポーツ人口10年で半減も 地方自治体が「自転車観光」にすがりつく根本理由

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近年、サイクルツーリズムが地方自治体で推進されている。その背景にはいったい何があるのか。

サイクルツーリズムの興隆

サイクルツーリズムのイメージ(画像:国土交通省)
サイクルツーリズムのイメージ(画像:国土交通省)

 近年、サイクルツーリズム(自転車を活用した観光)が地方自治体で推進されている。

 自然の豊かな観光地を有する地方自治体の観光振興策のなかには、サイクルツーリズムの振興策が含まれていることが多い。主に

・サイクリングルートの整備
・ルートマップの作成など周知のための広告活動
・サイクリングサポート施設の整備
・サイクリングイベントの開催・大型イベントの誘致活動
・サイクルガイドによるサイクリングツアーの実施

などである。しかし、それほど国内でサイクリングレジャーが盛り上がっているのだろうか。

「都市部での交通手段」としての利便性

スポーツ自転車の市場規模トレンド。「レジャー白書」より(画像:日本生産性本部)
スポーツ自転車の市場規模トレンド。「レジャー白書」より(画像:日本生産性本部)

 日本生産性本部の「レジャー白書」によれば、2021年のスポーツ自転車の市場規模は2680億円であり、販売が伸びた前年の2710億円からは減少したものの、2005(平成17)年からおおむね増加傾向にあることがわかる。

 確かにスポーツ自転車市場は伸びていると言える。若者の自動車離れが叫ばれるなか、

・小回りが利いて渋滞に巻き込まれない
・自動車と比較すれば駐車場を確保する必要もなく維持費が安い

など、「都市部での交通手段」としての利便性が評価されている。

 市場規模が拡大した2020年は国内で新型コロナウイルスが感染拡大しはじめた年であり、閉鎖空間で密になって感染リスクの高い公共交通機関と比較すると、密にならない交通手段として自転車が改めて注目された。毎日の通勤を運動も兼ねて自転車に切り替えた人もいただろう。

 ライフスタイルから自転車を選ぶ人も増えている。高額なブランドのロードバイクの価格は優に自動車1台分はするもので、節約志向だけではなく、前向きに自転車を選択している人も多いと言える。

 自転車はCO2を排出しないため環境に優しく、エコでサスティナブルな交通手段として支持する人が若者を中心に増えた。ロードバイクに乗ることはボディメイキングの効果が高く、健康や体形維持に意識の高い人が生活に取り入れていることもある。

 また、欧米で盛んなスポーツだけにウエアやグッズも独特のセンスがあり、そのデザイン性に引かれる人もいる。都内ではサイクリストを意識したスタイリッシュな施設が開発された。

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