小さなボディにセダンの風格! 60年代を駆け抜けたマツダ「キャロル」、今も古びぬその魅力とは
キャロルが成功した秘訣

ただし、前作のR360クーペが空冷V型2気筒OHV(オーバーヘッドバルブという方法で弁の開け閉めをするエンジン)というオート3輪的なエンジンだったのに対して、キャロルは一転して水冷直列4気筒OHVという小型乗用車並みの充実したメカニズムとなっていたのが特徴だった。
ちなみにこのエンジンは、OHVながらセンタープラグを実現するために燃焼効率に優れたヘミスフェリカルヘッド(半球形燃焼室)となっていたほか、シリンダーブロックからシリンダーヘッドまで総アルミ合金製という、マツダがいうところの「白いエンジン」だったのも大きな特徴である。
わずか358ccの4ストロークサイクル水冷4気筒OHVエンジンは、ライバルの多くが空冷2気筒2ストロークサイクルだったなかでは静かでスムーズかつ排気煙を出さないという点が高く評価された。
ただし短いピストンストロークが災いして低速トルクに乏しく、必然的にトランスミッションはノンシンクロかつウルトラローギアードの1速を備えた4速と発進が慌ただしかったことは否めなかった。
ボディはモノコック、サスペンションは前後ともトレーリングアームの4輪独立懸架。このサスペンションの特徴は、
・スプリングにコンパクトでプログレッシブ効果があったトーションラバーが採用されていた
・前輪はフォルクスワーゲンによく似た剛性の高いダブルトレーリングアームとなっていた
ことだった。
さらにミニマムサイズのボディながら、後席のヘッドルームを確保するため、リアウインドーを逆スラントさせた個性的なデザインが採用されていた。マツダによって「クリフカット」とネーミングされていたこのデザインは、ヨーロッパの小型車に多く採用されていた当時の流行モードでもあり、マツダの敏感な感性が現れていた点といってもいい。
こうしてデビューを飾ったキャロルは、ライバルに対して非力という弱点はあったものの、前述の通り4気筒エンジンならではの静かでスムーズな走りと、2ストロークサイクル特有の排気煙を嫌う層から大きな支持をとりつけることに成功した。これだけ充実したメカながら、
「価格がライバルとほぼ同じだった」
ことも成功の秘訣(ひけつ)だったといっていい。