牟岐線「新駅問題」混迷続く 無人駅なのになぜ徳島県知事選の争点に浮上したのか?
過去の対立が新駅の行方に影響
新ホールは老朽化で取り壊された旧徳島市文化センターの後継となる施設で、当初は市が計画を推進していた。しかし、反対運動の激化や徳島県との対立などから2人の市長が退陣に追い込まれている。
先々代の原秀樹元市長は市中心商店街の新町西地区を再開発し、新ホールを建設する方針だった。しかし、整備費の高騰などから反対運動が激化して、2016年の市長選で建設反対を訴えて立候補した新人の遠藤彰良(あきよし)前市長に敗れた。
遠藤前市長は建設候補地を徳島駅西側など二転三転させたあと、旧徳島市文化センター跡地を選んだ。だが、跡地の3分の1を所有する徳島県と土地の名義をめぐる話し合いがこじれ、暗礁に乗り上げる。その結果、2020年の市長選で県市協調を掲げる内藤市長に敗れた。内藤市長は市有地を提供して県にホール建設を要請している。
一連の市長選で後藤田氏は遠藤前市長を後押しし、飯泉氏や自民党県連と対立していた。前回の知事選では元県議を推し、飯泉氏に挑んでいる。これに対し、自民党県連は2021年の衆院選で徳島1区に後藤田氏を公認しないよう党本部に要請し、公認を得た後藤田氏が選挙戦で飯泉知事と自民党県連を批判する異例の展開が続いた。
三木氏は参議院の選挙区が高知県と合区になり、比例代表の特定枠で当選した。選挙区の候補擁立を高知県に譲る代わりに徳島県の声を代弁する候補として特定枠に入ったわけだが、これを捨てて知事選に立候補を表明したことで自民党県連と溝を深めている。
徳島県は過去に保守政界が三木武夫元首相派と後藤田正晴元自民党副総裁派に分裂、「阿波戦争」と呼ばれる激しい争いを長く繰り広げた。くしくも後藤田氏は正晴氏の大甥、三木氏はかつて後藤田派の幹部を務めた三木申三元知事を父に持つ。
過去の対立が「阿波戦争」を思い起こさせる保守分裂選挙を招き、新駅の行方を混とんとさせている。有権者はどんな判断を示すのか、審判は4月9日に下される。