旅客機の操縦、「パイロット」「コンピューター」どちらが信頼できるのか? 1月ネパール墜落事故・中間報告書から考える
異常操作に気付かなったパイロット

現在はまだ中間報告の段階なので、詳細の分析は最終報告書を待たなければいけないが、事故原因が誤操作であることは揺るがないと思われる。
飛行機に限らず、システムの操作系(ヒューマン・インターフェース)には、必ず誤操作への対策がなければならない。今回の誤操作でも、コクピットではエンジン推力が失われた警報としてチャイム音が鳴っており、その際には計器盤の警告灯も点灯したはずだ。しかしパイロットは、警報の原因を確認して適切な修正操作をすることができなかった。
報告書によると、誤操作に伴って警報音が鳴り、警告灯が点灯した後も、パイロットたちは通常の着陸前チェックに進んでいる。パイロットは警告灯の点灯を深刻に受け止めるべきなのだが、音声の録音からは、そのような形跡は見られないようだ。
その後、推力の異常に気付いたパイロットたちは「No power(推力が出ていない)」と会話しているが、プロペラの誤操作には最後まで気付かず、無意味にエンジンの出力レバーを上げるだけだった。
着陸の直前は低高度で速度も低く、パイロットがするべきことも多い。そうした中で異常な事態が発生すると、着陸前のチェックや操作を進めながら異常の原因を特定して対処するという、負荷の高い行動が求められる。そのなかで、パイロットたちは重大なミスを発見することができなかったのだ。
おそらく最終報告書では、パイロットへの適切な訓練の実施などが勧告されるだろう。しかし、だからといって機体側に問題がないとして思考停止するのではなく、将来の安全につなげるために、可能な対策を考えることも必要である。
人間が握る人命の安全

現代の航空機設計においては、人的ミスによる事故の防止は、ますます重視される傾向にある。機械的あるいは電気的故障による事故は、信頼性の向上によって大きく減っているが、人間が過失を犯す確率そのものは減らせないから、人的ミスによる事故の割合が相対的に大きくなっているからだ。
航空機の安全性を承認する耐空証明の審査基準においても、ヒューマン・エラーが起きないような仕掛け(フール・プルーフ)や、エラーをした場合でも危険に陥らない仕掛け(フェイル・セーフ)などが求められ、人的ミスによる事故を抑止するための改善が続けられてきた。
いうまでもないが、人間を相手にする以上、そうした対策には限界がある。人的ミスの撲滅を極限まで追求すれば、絶対にミスをしないコンピューターによる完全自動操縦に行き着く。航空機工学の分野では、コンピューターの故障やプログラムのバグよりも、
「パイロットの過誤による事故確率のほうが高い」
として、旅客機の「完全自動化」を検討すべきだとする見解もある。
しかし、完全自動化にはコストもかかり、なによりも利用者の不安が払拭(ふっしょく)できない。多数の命をコンピューターによる自動化に預けるということは、たとえ事故の確率が下がるとしても容認できないのが、人間の不思議な心理である。
従って、今回のような事故があっても、コンピューターによる操縦の補助や自動化が進むことがあっても、旅客機からパイロットが姿を消すことは考えにくい。人の命を預ける飛行機の安全は、
「人間パイロットが最終的な鍵を握るべきだ」
というのが、現代においても原則になっている。