船・機関車だけじゃない! 明治日本のインフラ整備に「蒸気」が大活躍したワケ

キーワード :
, , , , , ,
江戸幕末から明治期にかけて日本で導入された「蒸気動力」といえば蒸気船や蒸気機関車が有名だが、道路環境の整備などに一役も二役も買った蒸気トラクタと蒸気ロードローラーについても、忘れてはならない。

蒸気トラクタと蒸気ロードローラー

蒸気トラクタのメーカー、アドバンス(画像:守山進)
蒸気トラクタのメーカー、アドバンス(画像:守山進)

 わが国における蒸気動力の歴史は、幕末に欧米から導入された蒸気船、そして明治政府の成立後に建設された鉄道における蒸気機関車に端を発する。

 その後は、明治政府が強力に推進した富国強兵殖産興業が本格化するに連れて、官民問わずに重工業現場に定置型蒸気機関が導入され、それは次第に農業や軽工業の現場にまで波及することとなった。

 一方、蒸気機関車以外の自走可能な蒸気機関車両の普及は、鉄道車両の普及に対して遅れを取ることとなる。

 これは、とりもなおさず当時の日本の道路インフラが、動力を備えた車両の運用に適していなかったことが理由と思われる。

 そして、この道路環境そのものの抜本的な整備において、ある種の蒸気動力機械が本格的に運用されることとなったのは、明治20年代後半のことと言われている。

 その機械とは他でもない、蒸気トラクタと蒸気ロードローラーである。

 これらは日本に導入される以前、欧米においては1850年前後に鉄道用蒸気機関車の派生型として考案され、その後は構造的な進化を重ねるとともに1880年頃に完成形となった。

 本格的に普及することとなったのは1890(明治23)年前後であり、それまで人力と畜力に頼っていた工事現場において、優れた能力を発揮したのである。

全てのコメントを見る