「キッチンカー」コロナ禍で急増も “移動できる”が裏目に、固定客付きにくい現実 コロナ後は生き残れるか?

キーワード :
,
コロナ禍による「巣ごもり需要」の追い風を受けて、存在感を増したキッチンカー。その課題とは何か。

運営が難しいワケ

路地裏(画像:写真AC)
路地裏(画像:写真AC)

 しかし、競争が激化して商品の人気に格差が生まれている。そのため、なかには開業して間もなく廃業してしまうケースも珍しくない。

 経済産業省「2022年版 小規模企業白書」によると、キッチンカーが含まれる「宿泊業、飲食サービス業」の1年以内の廃業率は

「5.6%」

となっている。これは全職業のなかでもトップクラスの数値だ。いったいなぜ、運営が難しいのだろうか。

 わかりやすいところでは

・多くの人をさばけない
・体力を消耗する

などがあるが、何よりの原因は

「出店場所の確保の難しさ」

にある。

 まず、公道での販売は現実的に厳しい。道路交通法において、公道上で商売を行う場合は「道路の使用許可」を申請する必要があるが、必ずしも認可されるとは限らない。むしろ、大きなイベントなどが重ならない場合は、個別に使用許可が下りることはほとんどない。

 そのため通常は、自治体や企業の許可を得られれば営業できる公園・駐車場などに出店するケースが多い。しかし当然ながら、競合のキッチンカーも似たような立地へ出店を考えている。狭い敷地のなかで客を取り合うことになるか、下手をすれば競合に追いやられて営業許可が下りないパターンもあり得る。

 さらに、車が駐車できるほどのスペースを発見し確保できても、同じ料理のキッチンカーが鉢合わせすることもある。かといって、人気のない路地裏に出店してもよほどの販促テクニックがなければ売り上げは伸びない。

 競合のいない路地裏での経営には、キッチンカーならではのリスクもある。店舗経営と違って出店位置を固定しにくいキッチンカーは、常連客を確保しづらいのだ。そのためSNSなどで必死に客を呼び続けるといった広報にも時間を取られてしまう。

「移動が容易」という特性が、逆にデメリットにもなっている。はたから見る以上に課題は多いである。