「共同物流」は運送会社にメリットがあるのか? 大荷主連合が握る「運賃交渉」のカギ、独禁法違反に気を付けろ

キーワード :
, ,
2023年はじめ、公取委は「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方」という報告書案を公表した。そのなかでは「物流共同化の独禁法上の問題」について、かなり詳細に論じられている。

共同化そのものは「正しい取り組み」

物流トラックのイメージ(画像:写真AC)
物流トラックのイメージ(画像:写真AC)

 2023年はじめ、公正取引委員会(公取委)は「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方」という報告書案を公表した。

 この文書自体はグリーン社会実現における独禁法の運用がテーマだが、そのなかで、

「物流共同化の独禁法上の問題」

について、かなり詳細に論じられている。

 物流共同化と独禁法との関係は、あまり注目されることがないが、これから共同化を始める企業にとっては、絶対に知っておくべき、非常に重要な論点である。

 なお改めて言うまでもないが、物流共同化そのものは推進すべき

「正しい取り組み」

である。

 複数の荷主が共同化することで、1社ずつでは満載にならない場合でも、トラックをフルに活用できる。輸送効率の向上は環境に優しいだけでなく、効率化を通じてドライバー給与引き上げの原資を生むことにもつながる。

 このように物流効率化が期待される共同化だが、独禁法の規制を知らないがゆえに、善意で始めた共同化が法律違反になってしまっては本末転倒である。そこで共同化の独禁法上の課題について、公取委の報告書を踏まえ改めて考えてみたい。

報告書に書かれた一文

「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方」(画像:公正取引委員会)
「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方」(画像:公正取引委員会)

 さて、上記の公取委の報告書には、共同化の独禁法上の課題がいろいろと記載されているのだが、委託料金との関連では次のような問題点が示されている。

「物流業務の調達市場における共同物流への参加者の市場シェアが高く、競争者のけん制力が弱いなどの場合には、共同物流への参加者が物流業務の調達価格をある程度自由に左右できるようになる(以下略)」

 この文章だと少しわかりにくいかもしれないが、かいつまんで言うと、市場シェアの高い荷主が手を組めば、

「運賃水準をコントロールできてしまう」

ということである。

運賃情報を共有するのはNG

共同配送のイメージ(画像:国土交通省)
共同配送のイメージ(画像:国土交通省)

 確かに公取委の指摘どおり、シェアの高い大手荷主が一体となって運送会社と価格交渉に当たれば、ただでさえ立場の弱い運送会社であるから、対等な運賃交渉が望めないのは火を見るより明らかだ。

 言うまでもなくこのような価格交渉は不公正であり、法律を持ち出すまでもなく「アウト」である。

 ここで注意が必要なのは、このようなわかりやすい談合のケースだけでなく、

「荷主間の情報共有」

がNGだということである。

 共同化を実現するには、各社の貨物量や輸送方面などの情報を共有することは避けられない。しかし運賃の情報まで共有してしまうと、いろいろな問題が生じる。例えば

「ライバルのA社は、当社より安い運賃でB運送に委託している」

といった情報が筒抜けになってしまい、結果的に談合するのと同様の効果を生じてしまう。

 従って共同化の際には、このような問題が生じないよう、「情報の遮断」に十分に注意する必要がある。商工団体などの中立的な第三者に情報の扱いを委ねるのも一案である。

全てのコメントを見る