「熊本空港」活性化、県はなぜコロナ終息待たずに動くのか? 背後にあった4兆円以上の経済効果とは
TSMCに沸く熊本
熊本県は2023年度、熊本空港と周辺の活性化構想見直しに着手する。コロナ禍で国際線の運休が続くこの時期に、あえて動きだす理由はどこにあるのだろうか。
「台湾積体電路製造(TSMC)の進出というビッグチャンスを追い風にして大空港構想ネクストステージの改定作業を進めている。秋ごろをめどに新たな構想を策定したい」
3月上旬の熊本県議会定例会。自民党会派の代表質問に答え、田嶋徹副知事は熊本空港とその周辺の将来構想を描き直す考えを明らかにした。
「大空港構想ネクストステージ」は2016年に熊本県が策定した。この年に発生した熊本地震で大きな被害が出た益城(ましき)町の熊本空港を復興の象徴と位置づけ、コンセッション方式(公共施設の所有権を国や自治体が保有したまま、長期間の運営権を民間事業者に売却する民営化手法)による空港運営の民営化、JR豊肥本線からの空港アクセス鉄道開設など空港機能の強化や、新産業の創出、観光振興など空港と周辺地域を一体化した活性化策をまとめている。
TSMC進出で台北線開設を視野に
そこへ巨大な黒船がやってきた。半導体受託生産世界最大手のTSMCが益城町に隣接する菊陽町へ進出したことだ。
初期投資額1兆1000億円以上、総従業員約1700人で、うち新規雇用1200人規模。TSMC特需が熊本県に吹き始めたことから、コロナ禍の終息を待たずに大空港構想の内容を全面的に見直す。
田嶋副知事は答弁で
「熊本地震からの復興策策定などで有識者から哲学を与えてもらった。大空港構想も新たな有識者会議を設けて見直しを進める」
と述べた。有識者会議は既に人選に入っており、2023年度の早い段階でスタートを切る見込み。
構想内容が固まるのは有識者会議がスタートしてからになるが、TSMCの新工場が操業を始めれば、観光だけでなく、ビジネスでも台湾との往来が活発になると期待されている。現在、熊本空港に路線が開設されている高雄便(コロナ禍で運休中)以外の新規台湾路線開拓が、空港活性化の目玉になりそうだ。
熊本県交通政策課は
「空港を運営する熊本国際空港と連携して台北便の開設を視野に入れ、台湾側と協議を進めている。ぜひ、実現させて熊本県の振興に寄与したい」
と意気込んでいる。