JAL機の福岡空港「門限破り」 既出報道に欠けていた「乗客の権利」という視座、航空需要回復の今後このままでいいのか?

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羽田空港から福岡空港を目指したJAL331便が2月19日、福岡空港の門限(カーフュー)である22時までに間に合わないとして、空港側から着陸を認められず、インターネット上で話題となった。

「騒音」「受け入れ体制」という問題

福岡空港(画像:写真AC)
福岡空港(画像:写真AC)

 ひとつ目は「騒音」の問題である。門限の設定根拠は何より騒音対策だ。日本では航空機の騒音に対して極めて敏感である。これは特に伊丹空港での裁判闘争に端を発しているといってもいい。

 ただ、既に指摘されているように、航空技術は進歩し、古い航空機をもとに設定された門限については見直す必要がある。そうすれば、特に混雑空港の運用能力は高まり、緊急時の対応力も向上する。

 ふたつ目は、

・乗客を収容するための十分なホテル客室が用意できない
・バスなどの移動手段が確保できない

といった、着地空港での「受け入れ体制」の問題であり、また翌日の運航体制への影響である。

 航空機は目的地についたらそれで終わりではなく、次のフライト(あるいは翌日の初便)にも使用しなければならない。航空機は特定の路線に固定されているのではなく、最も効率的に運用されるようにプログラムされているためだ。

 日をまたぐ場合、航空機が翌日早朝にどこにあるかによって、最後に運航した路線だけでなく、他の路線の運航体制に影響が出ることがある。この点から、翌日の運用上、羽田空港に戻った方が最も影響が少ないと踏んだと考えられる。ようは、影響を受ける乗客が最も少なくなるのだ。

「乗客の権利」という概念

飛行機のフライト(画像:写真AC)
飛行機のフライト(画像:写真AC)

 そして三つ目の論点として取り上げたいのが

「パッセンジャー・ライト(乗客の権利)」

である。

 これは欧米ではすでに一般化している概念であり、乗客をさまざまな不都合から守ろうというものである。消費者保護と同等のものと思えばよいだろう。

 こういった考えは、米国の格安航空会社(LCC)がパイロットの賃金に出来高制を導入したことに端を発している。従来の航空会社では、人的側面から安全運航を保障しようとパイロットに対してかなりの優遇措置をとってきた。

 例えば、実際50時間くらいしかフライトをしていなくても、約80時間分の賃金が支払われていた時代があった。その後、航空会社の競争が激しくなり、フライトの実態に即した賃金に修正されていった。ただ、一部のLCCはそれをさらに進め、

「実際にフライトをした分だけ」

賃金を支払うとしたのでだ。