自動運転に「良心」は働くのか その基準は? キーパーソン清水和夫氏に聞く議論の最前線
自動運転技術の発達により、クルマの「運転者」が変わろうとしている。これまで人間に合わせて車両や道路、法律が設計されてきたが、システムが加わると何がどう変わるのか。国内で自動運転の議論をリードする国際自動車ジャーナリストの清水和夫氏に話を聞いた。
自動運転のレベルは分かりにくい?
――自動運転のレベルは現在1~5で定義されているが、販売用のレベルと法律用のレベルとで分ける方が良いのか?
そもそも自動運転のレベルは定義であって、製品を売るためのものではありません。レベル3に関して言うと、法律では、ドライバーはシステムから要請されたら直ちに運転に戻れることや、高速道路だと60km/h以下などの条件を設けています。
しかし、実際に登場したホンダ「レジェンド」の場合、渋滞運転機能「トラフィックジャムパイロット」の走行環境条件は、高速道路などで30~50km/hの範囲にしています。メルセデス・ベンツのレベル3は、プロモーションビデオを見る限り59km/hから使えるようになっています。
トヨタの高度運転支援技術「アドバンスド・ドライブ」は自動運転レベル2に相当するものの、高速道路では120km/hまでハンズオフが可能です。個人的には120km/hで走っているときにハンドルから手を離すのはちょっと怖いですよね。
このようにメーカーによって考え方が異なり、環境条件も異なります。ユーザー目線で考えると、レベルとは違う「使いやすさ」の軸も大事になってくるでしょう。ヨーロッパではユーザーに対して自動運転のレベルの定義をあまり案内しなくなってきています。実際のユースケースに対して、レベルに関係なくシステムのできる・できないを説明していくのが大切だと思います。