モータースポーツのプロ用カメラ、なぜ「キヤノン」の独壇場なのか? 各社比較を通して考える
ニコンの優れた耐久性
しかし長年の競合、ニコンの場合はどうか。
現在のフラッグシップ、ニコンZ9は、キヤノンR3より大きく重い。しかし耐久性や放熱性に優れ、記憶メデイアは大容量かつ高速のCFexpress Type Bが2枚使えるなど、プロ用カメラとして使い勝手はR3以上といわれている。
しかしハードの性能差以上に、非常に過酷なモータースポーツの現場ではさらに大切な視点がある。それはメンテナンス・サポート体制だ。
この数年、何人かのモータースポーツカメラマンになぜキヤノンを使用し続けるのかと聞いたことがある。筆者(J.ハイド、マーケティングプランナー)がニコンユーザーであることを知ってか、異口同音に
「壊れないのはニコンだと思うが、長年にわたりキヤノンのサポート(体制)に世話になっているから」
というのが、その答えだった。
ニコンはコロナ禍の数年にわたり、プロフェッショナルサポート(以後、プロサポート)に関してさまざまな事情で、徐々に縮小を余儀なくされた時期があった。公式発表にはないが、日本国内ではF1やMoto GPなどの国際競技以外のモータースポーツでのプロサポートはほぼなかった。しかし、2023年の春の国内レースからはプロサポート体制を再びスタートさせる。
ソニーは、2019年のルマン24時間にプロサポートを提供することで話題となった。しかし2020年のコロナ禍以降、2022年までは積極的な動きができていない。
一方、モータースポーツの現場でキヤノンのプロサポートにお世話になった例も聞くことが少なくない。代表的な伝説に、他社のカメラを使用しているプロカメラマンが機材を破損した際、キヤノンが機材一式を貸し出したという話もある。
直近でいえば、2023年2月に3年ぶりの開催となったカメラの日本最大の展示会「CP+(シーピープラス)」において、キヤノンがモータースポーツのライブセミナーイベントを開催したのに対し、ニコンやソニーに同種のセミナーが皆無だったことも象徴的といえよう。